空き家のミカタvol.5 お湯を得る
住まい2023年1月25日
	 今年はなんとなく暖かいお正月でしたが、再び雪も降って寒さが厳しいくなっていますね。みなさま給湯器は無事凍らずに過ごせておりますか。今回は給湯の熱源についてです。(目次はこちら)
	まず、どんなお湯の出し方があるかを想定し、
	 ①台所や洗面所・シャワーなど、蛇口をひねると出る
	 ②直にお風呂の湯船のお湯を沸かす
	大きく分けて二つとします。
	それぞれ、お湯はどうやって調達しているのでしょうか。
	
	 基本的な装備として、①を得るためには給湯器が必要です。
	給湯器の燃料によって以下のようなパターンがあります。
	〇ガス給湯器
	 神山町では都市ガスは通っておりません。ガスの場合はプロパンガスとなり、月々の使用料金を払って使います。町内にもいくつかガス屋さんがあり、ガスボンベを配達してもらえます。
	
	◯灯油給湯器
	 灯油はガソリンスタンドなどへタンクを持って買いに行くか、配達もしてくれます。写真の右側にある円筒形のものは灯油のタンク、上についている丸い蓋を開けて灯油を入れます。
	
	◯電気温水器・エコキュート
	 電気温水器は文字通り電気でお湯を作ります。エコキュートは正式には「自然冷媒ヒートポンプ給湯機」といい、空気中の熱を冷媒を介し電気を使って取り出すシステム、です。
	
	◯太陽熱温水器
	 古いお家ではお風呂で使われている例がよく見られます。
	 化石燃料代がかからずにお湯が得られるなんて素晴らしい!ですが天候や季節に左右されるため、基本的には他の熱源と併用して使われています。最近はガスなどの他のボイラーに太陽熱温水器を接続できるような製品も出ているようです。
	 下の写真のようなものが屋根に載っています。
	
	お風呂の中にこんな配管が出ていれば、太陽熱温水器に繋がる配管でしょう。
	
	
	 このように、なんらかの熱源を選択してお湯を作ることになります。これらは神山町外でもだいたい同じ話ですね。
	 ただ水源が山水の場合は、水に砂が混ざることや水圧への考慮が必要なため、実際に改修するときはそのような山水の事情について施工者との相談して機器を選ぶことが必要です。
	次は②のタイプについて。
	 上記の給湯器で浴槽のお湯も賄う以外の方法として、神山の空き家では何と言っても薪風呂がよく見られます。家を眺めたとき煙突があることですぐに分かります。
	◯薪用の風呂釜
	 浴室の横に「風呂釜」が置かれ、浴槽の水を取り込んで釜で温めて浴槽に戻す、という温め方の仕組みです。なので浴槽には穴が二つあります。
	
	薪に加えて灯油用のバーナーが付いているタイプもあり、薪炊きと灯油の兼用ということで「兼用釜」などと呼ばれています。兼用釜の場合、浴室内にこのような灯油で追い炊きのできるスイッチが付いていたりします。
	
	 浴室の外にあるのは下の写真のようなもの、右側茶色いのが薪焚き釜でパカッと開いているのが薪を入れる炊き口、銀色の煙突が付いています。この写真の例は兼用釜なので、左にクリーム色の丸い灯油タンクがあり、釜に繋がっています。
	
	◯浴槽の直下で薪を焚くタイプ
	・浴槽がタイルやホーロー
	 これが一番メジャーなタイプかもしれないです。改修されている空き家でも焚き口だけ残っていることがよくあります。神山の冬はかなり冷えるので、昔ながらのタイルやホーローの浴槽の場合、シャワーでお湯を溜めてもすぐに冷めます・・・そういう状況には薪で炊くのがちょうどよいのでしょうか。私も薪風呂のお家に住んでいたことがありますが、実際体の温まりが違いますね!下の写真は焚き口とそこから煙突が出ている様子、お風呂の外壁にこのようなものがあれば薪風呂の家だなと分かります。
	
	・浴槽自体が釜
	 時々ですが、五右衛門風呂にも出会います!
	 下の写真は浴槽の形をタイルで作って中が鉄窯というタイプです。
	
	 次の写真は別のお家にて、途中まで解体されている五右衛門風呂。鉄窯があって下から炊く仕組みが良く分かりますね。
	
	 直に沸かす例として、現役でよく使われているものとしてお風呂焚きを紹介しましたが、空き家の中には「オクドサン」が残っているお家もあります。昔はもちろん薪で調理・お湯沸かしをしていたわけです。
	
	空き家の片付けをしていると、このような羽釜がたくさん出てきます。
	神山の日常会話で「タキモン(炊きもん)」という言葉、よく出てきます。
	さて、なんのことでしょうー!?
	 ところで、給湯熱源の話とはずれますが、お風呂の基本情報として、
	いわゆる古民家といわれるような家では元々水回り(お風呂・トイレ)が母屋と別棟になっていることが多いです。木の家の大敵は「水と湿気」なので、家を守るために水回りは離して設けたのでしょう。
	 その後改修がされて母屋の端にお風呂トイレが増築されているお家も多いですし、今も別棟になっているお家もあります。
	例えば、空き家のミカタVol.2で公図を紹介したお家は、そのタイプです。
	こんな感じで別棟のトイレお風呂があります。
	
	時代が下って改修したと思われる物件では、母屋にお風呂・トイレをくっつける改修工事がなされていることがよくあります。その場合にも完全な室内になっておらず、軒下に増築されていたり、母屋の隣にくっつけて半外の軒下を通って行くようになっている例もあります。
	 下の写真の例ではお風呂は別棟のまま、トイレのみが軒下にコンクリートブロック造で足されていました。縁側に出ることにはなりますが、傘を差さずにトイレに行けます。
	
現代人としては夜にいったん外に出てお風呂・トイレに行くのも大変だな、、、とは思います。でも逆に、母屋内に増改築した空き家の中には、その水回り部分からシロアリ被害にあったり増築の継ぎ目から雨漏りがあることも多く、悩ましい話です。
	 また、たくさんの空き家をみていると、熱源の時代変遷も感じられます。
	かなりおおざっぱですが、
	薪・炭→灯油・太陽温水器→ガス→電気
	と時代が移る改修の跡が見られます。
	 でも、新しく空き家を改修した方の中には給湯熱源に薪を使う事例もあります。またお湯作りの話だけでなく、暖房として薪ストーブもありますね。
	 こちらの例はB&B On y va (オニヴァ)と齊藤さんのご自宅を賄う薪ボイラーです。古いお家を改修するときに導入されました。
	
	冬の1月で一日に使う薪はコンテナ5つ分くらい、お店部分+5室の床暖房とお風呂・キッチンなどの給湯一式に使われています。オーブンのように炉内で直火調理もしているとのこと。
	
	下の写真のような拾った落ち枝も立派な燃料、油分があるので一気に火力を上げたいときにちょうどよい、と齊藤さん。他にも、熾火を残すため寝る前には広葉樹を一本入れる、蓄熱容量の大きい床暖房の入切りタイミング、など生活に合わせて熱をコントロールする技をたくさん見つけていらっしゃいました。
	
薪は調達の労力は必要ですが、山を整備しながらの身近な燃料を使えるという魅力があり、再び選択肢として見直すこともできますね。
設備機器は古くなっていくと必ず壊れるものです。また、神山では冬季の凍結によって配管が水漏れしていることがよくあるので、空き年数の長い家に住む場合に修繕対象となる可能性の高い部分です。修繕の必要度合いによっては、自分で新たに別の熱源を選択することもありえるでしょう。
	最後に、空き家で驚いた一例。
	 山水を引いてくる管にあえて陽を当てながら屋根の上を回し、お風呂に入れている家がありました。なんと黒い管を通ってくる間に温まるとのこと。
	
いわゆる製品としての太陽温水器すら無し、究極のエコですね。
	普通、給湯器と使う場所が遠い時に配管の中の水が冷たくてお湯が出るまでに時間がかかって困ることはよくありますが、これは逆転の発想。水源からの距離を逆手にとって温めるなんて。
生活のためにはどんなエネルギーで熱を得ていくのか、この機会に意識して空き家見学をしてみるとよいかもしれませんね!

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コメント一覧
素晴らしい!「風呂の熱源 変遷についての一考察」という、論文ですね。「タキモン(炊きもん)」とは「薪」のことです。
2023年1月25日 17:49 | ニコライ
毎回とても興味深く読んでいます。そして今回もとっても勉強になりました・・。!
2023年1月27日 12:53 | kuronaga
kuronagaさん、ニコライさん、 コメントありがとうございます!励みになります。 最近は電気代も、ガス・灯油代も、上がっているし、、、熱源について考えてしまいますよね!
2023年2月23日 11:19 | 移住支援センター