それぞれの「さくら色」をした染物が仕上がりました(手でつくる教室23 開催レポート)

なんでも2019年4月16日

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投稿者:西海 千尋

 さくらのつぼみがふくらむ少し前、3月16日のこと。西分の家で「手でつくる教室23 草木染めで自然の色をたのしもう」を開催しました。

 この教室では、神山在住の染物屋 瀧本昌平さんを先生に、染料となる植物を加工してその色素を抽出し、布を染め上げる「草木染め」を体験します。こちらでご用意したシルクの靴下や、持ち込みの生地などを各自で染める半日程度の内容です。集まったみなさんは、柄入れを楽しんだり、染め体験をしたり、ものづくりについておしゃべりを交わしながら過ごしています。

 第8回となる今回の素材は「神山のさくら」! 神山で育ったさくらの枝から染料をつくって染める教室でした。当日の様子を、手でつくる教室スタッフの西海が振り返ります。



草木染めならではのおもしろさ

 瀧本さんの営む「天然染料の染めもん」は、生地と染料の相性によって染まり具合や色味が変わります。

 「使う染料の状態によっても、布の素材によっても、天気によってさえも、仕上がりの色が変わるんよ。ほなけん、全くおんなじ色には染まらんなぁ」と話す瀧本さん。これまでにも、藍の生葉をつかった会では、濃く染まる生地と淡く染まる生地が出るなど、その様子が伺えましたが、今回の「神山のさくら染め」では、とくに顕著な違いに。

曰く、「さくら染めは色の抽出が難しく、ただ煮出しただけでは一般的な『さくら色』に染まらない。その加減が難しい」とのこと。手持ちのシャツやストールなど各々持ち込んだ生地を染める中で、みなさんの手元に現れたのはオレンジ色、茶色、ベージュ、薄ピンク……と色とりどり。瀧本さんが予定していたよりも色の種類が多かったようで、その難しさの一部を実際に体感することができました。



なんでこんなに違うんだろう、なんでこの色に染まったんだろう。首を傾げつつ色を見比べ、一緒に染め物を楽しむみなさん。ご持参された布の数だけ、いろいろなさくら色が生まれました。



 

神山ならではの染料で

 今回の染料となった「神山のさくら」は、「NPO法人 神山さくら会」さんからご提供いただいたもの。先日開いた草木染め教室の会場へ、「台風で倒れしまったさくらの枝を、ぜひ染物に使ってみて欲しい」と届けてくださったのでした。

 さくらの木は、剪定の時期や方法を間違えると、細菌による腐食や枯れてしまう可能性があり、枝と言えどもなかなか手に入りません。瀧本さんにとって、染料として足りるほどたくさんのさくらの枝が手に入ったのは、数年ぶりのことだそうです。「さくら染めは、特別な染めなんよ」と話す瀧本さん。20年以上かけて、6,000本あまりのさくらの植樹活動を行ってきたさくら会のみなさんがいる、神山ならではの教室と言えるかもしれません。

 さらに、この日は特別にもう一色の染め物ができました。お知り合いの農家さんから譲り受けた袋いっぱいのよもぎを持ってきてくださった参加者さんが!そこで瀧本さんが即興で「よもぎ染め」を用意。

 二色の染め「重ね染め」で、こんなにおしゃれな染め上がりに。夕焼け時の神山の景色のような、ピンクとカーキのクラデーションがとっても綺麗でした。

(さくらの枝を提供してくださった、さくら会の久保さんも参加。神山の桜をつかった染物商品の開発を検討されているそうです。)


(よもぎ染には面白い特徴があるのですが、それはいつか、よもぎ染めの回にお話ししましょう)

 

筆者の感想

過去に6回の教室を開きましたが、こんなに染める素材ごとの違いが見てとれたのははじめてのことで、とっても面白い体験でした。これらの色は、全く突拍子もなく登場するわけではなく、さくらという植物の内側に潜んでいる色です。植物そのものの様子を目で愛でる「お花見」では出会えない、桜の別面を知れたような気がしました。次はどんな植物に出会えるのか、どうぞお楽しみに!


(さくら会さんの植えた神山しだれ桜 ※別日撮影)
(西分の家の2階から見た、鬼籠野さくら街道 ※別日撮影)

 

1日の流れでもう少し

朝一番。瀧本さんによって、下処理のされた桜の木の枝を、お鍋にどっさりと用意しました。水を加えて火にかけて、染液をつくります。ささがきのように裂かれた枝を、薪釜でグツグツ、グツグツ。20~30分ほど煮出すことで、透明だった水はどんどん色づき、赤茶色の染液になってきました。さぁさぁ、染めていきましょう。


全体を染め上げる人、グラデーションに挑戦する人。それぞれに仕上がりをイメージしながら、染液の中で生地をよく揉むことで色ムラのない染め上がりを目指します。

みなさんの手元の布が、別々の色に染まってゆく様子。この段階では、オレンジや山吹色に染まっていて、「黄色味」の強さが目立ちます。一体、どんな色に仕上がるのかドキドキ。

お昼休み。染物が乾くのを待ちながら、みんなで一緒に「いただきます」。瀧本家や参加者の方のお子様も一緒にほのぼのしたランチタイムは、この教室の恒例行事になっています。

展示されている染昌の作品を見て、さまざまな色を楽しむ時間も。瀧本さんの元で染物を学びながら、編み物をつくる目黒さんが、ご自身の作品を紹介している後ろ姿です。

完成しました。乾かす間にも、風や陽の光によって色味が変化し、最終的には、さくらの花びらに近い印象に。どの色味も柔らかく、綺麗な発色ですね!みなさん、お疲れ様でした。

 

 

次の手でつくる教室
教室24 豆ちよさんとコーヒーを楽しもう -手回しロースターで焙煎 編- 

イベントURL https://www.in-kamiyama.jp/events/37650/
豆ちよURL https://www.facebook.com/mamechiyo.coffee/
寄井商店街のお店をオープンしてちょうど一周年、豆ちよ焙煎所を営む千代田 孝子さんの教室です。ハンドローストを体験しながらお話を聞く会が、今週の土曜日に開かれます。ゆったりとした千代田さんのトークには、隠れファンも多いのではないでしょうか。あの柔らかいコーヒーの味わいはどんな風に出来上がっているのか、千代田さんのものづくりについてどんなお話が伺えるのか、今週末が楽しみです。

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西海 千尋

こんにちは。西海千尋と申します。町の中では「ちーちゃん」「西海ちゃん」と呼ばれています。 神山塾9期生として神山に来ました。今は町のあちらこちらで、お仕事をいただいたり、いろんなことを教えていただいたり。 緑の山々、職人技あふれる木のお家、たくさんのつくり手に囲まれて、「神山町」を大きな会社に、日々を楽しんでいます。

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