【後編】神山すだち農家組合 立ち上げの背景

農と食文化2020年10月25日

しごとづくり編集部

投稿者:しごとづくり編集部

(神山つなぐ公社)

NPO法人 里山みらい(以下、里山みらい)は、「目黒さんま祭り」や「東京高円寺阿波踊り」での出店、酒造会社や飲食店と提携した「神山すだちサワー」の打ち出しや「東京すだち遍路」、Instagramでの「KAMIYAMA SUDACHI AWARDS」など、様々な企画を打ち出してきました。

そして今春、「神山すだち農家組合」というFacebookページ・オンラインショップを新しく立ち上げたとのこと。

すだち収穫の現場を取材した前編に引き続き、 後編では、これまで神山すだちの発信を推し進めてきた里山みらい副理事長の永野さん、そして今年からFacebook・PR担当として参画している吉田さんから、オンラインショップ立ち上げの背景について伺います。

活動拠点である里山みらい事務所前にて、今年の運営チーム一同。写真左から、國本量平さん(研修生)、吉田 大輔さん、平鍋 篤史さん、岸田 裕史さん、佐々木 宗徳さん(里山みらい理事長)、永野 裕介さん。Photo by 神山すだち農家組合(Facebookより)


神山すだち農家組合 立ち上げの背景

−−この夏から、神山すだち農家組合として様々な発信を行なっていらっしゃいますね。どんな取り組みなんでしょうか。

永野さん:
里山みらいではこれまでは飲食店中心に展開していたので、(人員面での限界もあり)ネット部門に力を入れてこれなかったんです。ですが、この春からのコロナの影響を受けて、オンラインでの産地直送販売に力を入れ始めました。

(運営団体名の)「里山みらい」ではお客さんにとってはわかりにくいだろうなと考えて、「神山すだち農家組合」としての発信を行なっています。

吉田さん:
実際、8月末にオンラインショップをリリースすると、販売開始前の段階からたくさんの事前予約をいただきました。
これまで、毎年東京に営業に行って、お店の料理を通してお客さんにすだちを知ってもらって・・・。と、永野くんが時間をかけて続けてきた活動が、思わぬタイミングで繋がったんだよね。

神山すだち農家組合オンラインショップより。神山すだち農家組合では自社で活動している3名の農業研修生の他に、提携農家さんから商品となるすだちを買い取り。発信と販売を行うオンライン部門は、全体を取りまとめる永野さん、Instagram担当の永野 理恵さん、Facebook・PR担当の吉田さんのチームで行なっています。

 

−−「計画通り」にオンラインショップでの小売りを始めたと言うよりは、今の社会情勢に合わせて動いてみた。動く中で、これまで続けてこられた活動がお客さんに届いているような実感を得られているといった感じでしょうか。

永野さん:
そうですね。「東京すだち遍路」は今年で7年目なんですけど。当初は「かぼす」と間違われたものが、去年ごろから「すだち」として認識されはじめた実感がありました。

すだちは全国で徳島だけは飲食店よりも一般家庭での消費量が多くて、みんなkg単位で使っちゃうんですよね。何にでもかけちゃう。だけど、ほかの地域では「食べたことはある」という人が増えてきているけど、料理に使ったことはないって人がまだまだ多いんです。

もっといろんな世代の人に体験してもらえるような、広げるための活動をしたくて、オンラインショップではB品も出しています(数量限定販売中)。

市場の規格でB品とされる商品には、育つ過程でできた凹凸や小さな傷、葉と重なった部分の色抜けがありますが、無傷のものと味わいは同じです。

吉田さん:
大箱で3kgとか「そんなに使うかな?」って思っていたんだけど、予想外に販売が伸びていて。実際には「ご近所の方に分けます」とか、みなさんよろこんで使ってくださっています。
店頭だと商品だけを手に取るんだけど、ネットの場合には使い方やイメージもいっしょに見てもらえるんだよね。だから実店舗よりも買いやすいのかもしれないなとも思っています。

永野さん:
東京のスーパーだと1個100円とかで売られていて、それじゃぁなかなか一般の人は気軽に買えない。だけど(産地直送で色々な価格帯の商品を売ることで)、地元の人と同じような感覚で手軽に楽しんでくれる人が増えてきたんだと思います。

一方で、料亭などで出ているようなキレイなものには、もちろんそれだけの価値がある。 僕は、すだち自体にはものすごい可能性があると思っています。
だから「使ってもらえさえすれば、その価値をわかってもらえる」と、そのくらいの自信があるんです。

商品に同封している小冊子「みどり」では、家庭でたのしめる提案として酵素シロップの作り方を発信。「この冊子がほしい!」との反響も届いているだとか。


「売り手と買い手」の関係を超えた、横のつながり

永野さん:
(作りたいイメージの)理想を言うと、お客さんと「家族みたいにつながれる」こと。

これまでやりとりしてきた飲食関係の取引先の人たちは、お客さんと言うよりも、いっしょにすだちを応援してくれる仲間。「パートナー」って僕は呼んでいますけれど、そういう人がこれから個人の方にも増えていくともっと楽しくなるのなと思っています。

吉田さん:
オンラインショップを始めてわかったのは、お客さんみんなが以前よりももっと「つながり」を大切に商品を選ぶようになっているんじゃないかってこと。産地の応援みたいに買ってくれる人が多いんです。
これまで飲食店で食べていたお客さんが「すだちが買えるのを待っていました!!」と伝えてくれたり、購入後に「こういう風に使いました」と届けてくれたり。

−−これまでイベントや飲食店、SNS上で育ててきたお客さんとの関わりが、オンラインショップの運営を通して、よりダイレクトに「生のやりとり」として実感できるようになってきたんですね。

吉田さん:
Instagramに届く写真を見るとみんなすごく工夫をしていて、「そこまでセッティングして撮るんだ!」みたいに驚くことも多くて。

永野さん:
これは僕たちには撮れない。みんなのセンスがすごく良いんだよね。

Instagramで毎年開催している「KAMIYAMA SUDACHI AWARDS」では、神山すだちを使った写真が3900件も投稿されています(2020/10/20現在)。「#神山すだち」で検索!

永野さん:
始めたころにはマスメディアからの発信を意識していたんですけど、いまは参加型の発信を行ってます。きれいに整えて世界を作り込むというような、マスメディアのよさもあるとは思うけれど、いまは、自分たちらしさをそのまま伝えていければ良いと思ってます。

吉田さん:
「うまく見せる」と言うよりは、「リアリティ」を大切にしたい。

永野さん:
農業の現場は汚れることも多いし、生な現場感を見てもらえれば(あるいは、届けられれば)良いと思う。 みんなといっしょに盛り上げていくやり方にしてからは、コミュニケーションもできて、僕らも楽しいです。

吉田さん:
最近は「現地の生の農家の風景とか、その人の姿を届けよう」って、神山の写真家さんが一緒に取材してくれていて。SNSや商品写真だけではなくて、アーカイヴとしても残していきたいと動き始めています。

Photo by Masataka Namazu(神山すだち農家組合FaceBookより)

Photo by Masataka Namazu(神山すだち農家組合FaceBookより)

−−「現場の生感」!そうなんですね。 この夏発行された小冊子「みどり」のように、例年キャンペーンのハガキやポスターなどもしっかりと作り込んでいらっしゃるので、「きれいに届けること」を意識していらっしゃるのかと思っていました。

吉田さん:
リアルな部分は大切にしつつ、(一方で)ちゃんと使う人にとっての見やすさや使いやすさを意識して、気持ちよく伝わるようにすることも大切。

永野さん:
そうだね。例えば、神山すだちのロゴは素朴な感じで良いと思っていて。だけど、今年のKAMIYAMA SUDACHI AWARDSのロゴは、少し変えてみたりもしています。

−−なるほど。

SNSの種類など発信の場所が変わればムードも変わる中で、みなさんの伝えたい思いや情報をどう届けるとお互いに心地よいのか。その先にいる受け手のことを考えて、試しながら、楽しみながら進めてきた感じでしょうか。

吉田さん:
見てくれている人に、なるべく近い距離感で感じてもらえるようにしたい。「こうしたら、こう見える」って、作為的に進めているわけではないんだけれど。

サイトの運用と並行させながら届いたメッセージには返していくとかも、まだまだできる範囲でですが、少しずつできるようになってきたかな。

−−楽しそうに投稿やコメントを寄せて下さるお客さんとの交流を通して、ダイレクトなやりとりをより大切にするように変わってきたんですね。

受け手を巻き込んだり、生の現場を届けたり。ひとりの人としてお互いの顔が浮かぶような、温度感のある「横のつながり」がうまれているように感じます。

これまでに発行されてきた様々なPRツール。農家さんのお家の土間に大量のすだちを干しているポスター(4段目・中)を筆者が初めて見たときには、圧巻の風景に目が釘付けになりました。


みんなといっしょに、土地を未来へ繋いでいくこと

−−自社のオンラインショップやSNSに、出品モールの「食べチョク」。いろいろな角度から、情報発信をしておられる様子がよくわかりました。

最後に、里山みらい・神山すだち農家組合がこれから目指したいことを、教えてください。

吉田さん:
神山にはすだちの園地がたくさんあって、すごい数のすだちが採れるんです。だけど、僕の住んでいる上分地区でも、お年寄りが多くなっているし、次の担い手がいない状況です。違う仕事をしていたり、みんながすだち農家になれる訳でもないんだよね。

手を動かせる人に、週末とかできる範囲で収穫してもらって僕たちが引き取りにいくとか。人手の必要なタイミングで手伝いに来てくれる援農者さんと農家さんをつなぐとか。

僕たちにも、農家さんにもちゃんとお金が回る。そんな仕組みを作ろうとしているところです。

Photo by 神山すだち農家組合(神山すだち農家組合Instagramより)

永野さん:
例えば、いま直販で卸している飲食店さんは600件。これは、5年くらい前からKIRINビールさんと提携していて、営業さんが「すだち」の実や果汁を全国で営業してくださっているんです。

兼業農家さんの大半はふだんは別の仕事をしているので、(手入れができない分、傷や葉陰がつきやすいため)「加工用」として出荷します。でも、今は果汁が売れなくなっていて、売れないなら出荷ができない。そうして手入れができない畑が増えてしまうんです。
だから、農協さんと一緒に飲食店向けに果汁を販売したり、家庭向けの果汁商品を開発したりして、加工すだちを全量買取できるようになれたらと思っています。

いまの農家さんは70代以上の方が多く担い手が減る一方ですが、慣行農法で冷蔵(貯蔵)もして(長期的に出荷できる体制を整えれば)、すだち農家はちゃんと儲かるんです。

入り口から向かって一番奥。西日の差し込む大きな窓からは、となり合う鬼籠野神社の境内とお社が望めます。

永野さん:
僕たち、里山みらいが一番力を入れていることは次世代人材育成です。 今、研修生が3人いますが、彼らがちゃんと経営者として、やりたいことをやっていけるようになること。有機栽培に興味がある人がいれば、企画や営業までしたい人がいたり。それぞれがやりたいことに合わせて、その年の活動内容を考えています。

例えば、昨年は、市場での最高ランクである「赤秀」。それを超える商品として、樹齢15年以内の「神山4号」という(木から採れる)一番香りのよいものを「特選神山すだち」として、ミシュランの星付きのお店に営業をかけたりもしました。

今日、いっしょにすだちの収穫をしていたメンバー(研修生・援農者)もそうなんですけど、結局、人が大切だと感じてます。

−−なるほど。農家さんや、援農者さん、共感してくれるパートナーさんなど、一緒に活動をしていける人がいるから、すだちを届けたり、土地を守ることができるんですね。

そのために作り手に対しては、専業農家さんの育成、兼業農家さんの商品の買取や販路開拓、援農者さんと農家さんをつなぐ窓口を整えるような働きかけをしている。
同時に、買い手に対しては、飲食店や家庭での楽しみ方を提案したり、SNSでの発信者、営業の方、応援者・・・と色々な関わりしろを作っている。

作り手・買い手の両方に対して複数の接点を用意し、それぞれが暮らしの中で気持ちよく関われるような「循環」を作ろうとしていらっしゃるのだと感じました。

神山すだち農家組合のみなさん、ありがとうございました!

先輩のすだち農家さんと協力しながら、里山みらいでの研修内容を組み立てるのは永野さん。それぞれが卒業後に農家としてどんな活動をしていきたいのかをいっしょに考えながら、生産から流通までの研修を企画しているそうです。

「おいしすぎて、すだち中毒になっちゃうよ!」と吉田さんがオススメするオリジナルの生搾りすだち果汁(900ml)。香りが一番濃い季節に収穫したすだちの実を丁寧に搾っています。みどり香る白濁した果汁には、1瓶あたり5kg分ものすだちが使われているそうです。


 


神山すだち農家組合では、10月20日より神山すだちの再販を開始しました。11/30まで、先着200名限定!送料無料キャンペーンを開催中!

「いまいる場所からたのしめる、神山のお店や体験」では、クラフトビールや、季節の食べ物、神山杉をつかったくらしの道具などが買える町内のオンラインショップを紹介しています。

神山の産品が買えるオンラインショップ

取材日:2020/9/8(火)
取材&文責:しごとづくり編集部 西海 千尋

しごとづくり編集部

しごとづくり編集部 (神山つなぐ公社)

一般社団法人神山つなぐ公社 しごとづくり チームがお届けします。

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