空き家のミカタvol.3_2 ぼっとんトイレのその後

住まい2023年6月16日

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投稿者:移住支援センター

 こんにちは。移住交流支援センター吉田です。
 表紙の写真はなんだかわかりますか!?正解は、、、ぼっとんトイレ汲み取り口です!道がぎりぎり家の際まで迫っているので、汲み取り口を作るのも狭い中で工夫されていますね。 ※今までの連載記事はこちら

 さて、以前にアップした「空き家のミカタvol.3 トイレ探訪」を読んでいただき、「ぼっとんトイレを変えたい場合、どのような可能性があるの?」との質問をもらいました。

 そこで、今回は「ぼっとんトイレのその後」を紹介してみようと思います。よくある「その後」の道としては、大きく分けると、
 ①水洗トイレにする
 ②簡易水洗トイレにする
 ③諸事情により、ぼっとんトイレのまま

があるかなと思いますので、それぞれの事例をご紹介します。

①水洗トイレにする

 水洗トイレに改修するときには、便器自体を替えればよいだけでなく、トイレの部屋に給水管・排水管を引いてくる工事、浄化槽の導入が必要です。また一般的なウォシュレットを付けたい場合は電源工事も必要です。

 vol.3で写真を取り上げた事例①、こちらは元々の状態の写真です。

トイレ室の裏(外壁の外)には汲み取りのマンホールがあります。

 和式便座を撤去しました。下に便槽の穴があいていますね。

便槽の穴に排水管を設置し、水洗トイレの便座をつなぎます。
壁からにょろっと出ている灰色の線はウォシュレット設置用に引いて来た電線です。

トイレ室の裏(元マンホールがあったところ)の様子です。排水管や給水管が見えていますね。

 

<After>です。
 元のぼっとんトイレ穴を埋めるため、床も仕上げをし直しました。

そして建物の外には浄化槽を設置しました。

②簡易水洗トイレにする

 簡易水洗は便器の下はぼっとんトイレのままの便槽なので、引き続き汲み取りが必要です。ただ、タンク付きの簡易水洗便器に替えることにより、使い方としては水洗トイレのようにタンクのレバーをひねって使用後に水で流すことができます。元々のぼっとんトイレより水を流す分、便槽に溜まる量は増えるので、汲み取りの頻度は上がるそうです。

 トイレ室に給水管を引き込む必要はありますが、浄化槽や排水管工事が不要なので、①より改修コストをずいぶん低く抑えることができます。

 こちらもvol.3で写真を取り上げた事例②、元々の様子。

<After>です。
 簡易水洗便器がつきました!便器左横の床が灰色になっている部分は、元々のぼっとんトイレ穴を埋めた跡です。

トイレ外壁の裏に見える便槽自体は元のままです。

 さて、この例の改修では、実は手前にあった小便器スペースを壊してトイレ個室を広げています。

 なぜかというと、新しい便器はタンクが付く為に元々の便器より大きくなり、その分の部屋の広さが必要なのです。
 ちなみに①の事例は出来るだけ最小サイズの便器を選び、たまたまギリギリで入らないことはない広さの部屋だったので(大柄の人だと立ち上がる時に頭当たるかも・・・!?)部屋はそのままに新しい便器を入れていますが、①②どちらにせよぼっとんトイレからの改修ではトイレ個室の広さがネックになる例が多いです。その場合、個室を拡張する工事を伴うこともあり、プラスの改修コストが必要になります。

③諸事情により、ぼっとんトイレのまま

「諸事情」はお家の状態や使う人によって様々ですが、上記のように簡単には部屋を広くできないという要因が一つあると思われます。もちろん大掛かりに間取りを変えたら可能ですが、そうすると今度は予算が合うかという「諸事情」になってきますね。

 事例③の間取りです。こちらはトイレ個室の隣に小便器や手洗いなどはなく廊下や隣の部屋だったため、どうしても広げるスペースがなかったのです。二階だったりすると外に広げることもより難しくなってきます。

 その場合に出来ることの一つとして、給水管を引いてきてこのような水鉄砲のようなもの(正式名称はなんでしょうか?)を付けました。②の例のようにレバーをひねって水を流すことはできませんが、トイレを使用した後に手動で水で便器内の掃除をすることができます。
 手持ち写真がないので、すみませんが図解です。また今度空き家で出会ったら写真撮ってきます!


それから、①②③に関わらず、どんなトイレ空間にしたいかによっては、便器を替える工事に伴って、以下のような事が付随してくるかもしれません。
・便器の位置を変えて床の穴位置がずれたら、その穴をなんらか塞ぎますが、もしこだわるなら、部屋全体を新しい床の仕上げにする。
・換気扇をつける
・照明を替える
・手洗いを付ける
・元々水洗トイレだとしても、便座・ウォシュレットを新しいものに変える。
などなど。ぼっとんトイレの変え方は他にもいろんな方法があるかと思います。みなさまも、よい事例があれば是非教えてください!


 最後に、谷崎潤一郎「陰影礼賛」のトイレのくだりがおもしろかったので、ぜひご参考に。
以下引用です。

~前略~
まあそんな訳で、私も自分の家を建てる時、浄化装置にはしたものの、タイルだけは一切使わぬようにして、床には楠の板を張り詰め、日本風の感じを出すようにしてみたが、さて困ったのは便器であった。と云うのは、御承知の如く、水洗式のものは皆真っ白な磁器で出来ていて、ピカピカ光る金属製の把手などが附いている。ぜんたい私の注文を云えば、あの器は、男子用のも、女子用のも、木製の奴が一番いゝ。蝋塗りにしたのは最も結構だが、木地のまゝでも、年月を経るうちには適当に黒ずんで来て、木目が魅力を持つようになり、不思議に神経を落ち着かせる。分けてもあの、木製の朝顔に青々とした杉の葉を詰めたのは、眼に快いばかりでなく些の音響をも立てない点で理想的と云うべきである。私はあゝ云う贅沢な真似は出来ないまでも、せめて自分の好みに叶った器を造り、それへ水洗式を応用するようにしてみたいと思ったのだが、そう云うものを特別に誂えると、よほどの手間と費用が懸るのであきらめるより外はなかった。そしてその時に感じたのは、照明にしろ、煖房にしろ、便器にしろ、文明の利器を取り入れるのに勿論異議はないけれども、それならそれで、なぜもう少しわれ/\の習慣や趣味生活を重んじ、それに順応するように改良を加えないのであろうか、と云う一事であった。」

 前略にしてしまったところも、素敵な文章です。
私個人的にはもうなかなか昔のトイレには戻れないなあと思ってしまいますが、
「されば日本の建築の中で、一番風流に出来ているのは厠であるとも云えなくはない。(前略の中から引用)
 考えてみたいところですね。いつか木桶に杉の葉トイレのお家に出会ってみたいものです。

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移住支援センター

物件紹介から交渉、契約、地域への順応支援にいたるトータルサービスを提供。 「こんなところに住みたい」という移住希望者の要望と、「こんな人に来てほしい」という所有者や地域住民の仲介役を果たします。 「これがダメなら、あれはどう?」というような不動産屋さん的な対応はしません。 最適で、最善の組み合わせを実現するため、一件一件に時間をかけます。 家探しには忍耐が必要です。その忍耐力をお持ちかどうかも、マッチングの大きな要素となります。

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コメント一覧

  • 谷崎潤一郎「陰影礼賛」のトイレのくだり・・・トイレの話のせいか、思わず 「へぇ・」とつぶやいてしまいました。(失礼しました)

    2023年6月20日 23:38 | 河野公雄(ニコライ)

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