神山町と考える、これからの地域留学 レポートシリーズ③ 神山の農業を次の世代につなぐ 食育の取り組み〜前編〜
学び2018年12月28日
いまいる場所を離れて、田園部や中山間地の高校で3年間を過ごすということが、高校生自身や地域にどのような可能性をもたらしうるか。自然に囲まれたまちで、今なにが学べるか。そんなことを、まちに暮らす保護者や先生、地域留学経験者など、様々な立場の人たちから様々な視点で語ってもらい、レポートとしてお届けすることにしました。
右:支配人/真鍋太一さん 左:食育担当/樋口明日香さん
今回の主役になる株式会社フードハブ・プロジェクトは神山町役場、神山つなぐ公社、株式会社モノサスが共同で、「神山の農業を次世代につなぐ」ために立ち上げた会社です。本日は、支配人の真鍋太一さんと食育担当の樋口明日香さんのお話。
前編では「地産地食」を合い言葉に、地域の農と食を次の世代につないでいくために取り組んでいる真鍋さんのお話を、後編では、その中の取り組みの1つである食育の取り組みを樋口さんの話を通してお届けします。
(以下、真鍋さんのお話です。当日の様子が伝わるよう、イベント時のスライドを使用しながら、掲載用に編集しました。)
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神山町の農業の現状とフードハブ・プロジェクトの思い
神山町の人口は約5300人で、高齢化率が50%を超えていて、60歳以上の人が2人に1人という状況。農業従事者の平均年齢71歳という中で、今の景観を守っているが、担い手が不足していて耕作放棄地が増えている。その環境の悪化によって、鹿、猪、猿が農作物を食べてしまう被害が出ている。
現状、いい悪いではなく、農作物・加工品はJAを通して、市場の大きい都会に届けられ、不特定多数の人に売っているのが現状。今の農業の置かれている状況だと、都会(不特定多数)に出荷して売れているけど、地元(特定多数)の人たちが全然食べてないよねという状況は多い。
そこで私たちは、「小さいものと、小さいものをつなぐ」と言ってるが、基本的には自分たちで育てて、社食みたいな活動で不特定多数ではなく、地元の人たちに食べていただくという活動をしている。我々は地元の人のためにやると考えているが、そこに魅力を感じて、都会から食べに来てくださる人もいる。神山のみんなで食べて、神山の農業を支える仕組みを作っていくことを目的にやっている。
農業の担い手の育成
我々は農業の担い手の育成を、社会的農業と呼んでいる。本来、農業は社会的側面があるが、農業の担い手を育成することで、地域の景観を守り、地域を次につないでいくことできるので、社会的農業と言っている。
それだけではやっていけないので、シビアな話、食堂とパン屋(食品店併設)でビジネスとしてお金を稼いでいかないといけない。加工品開発も初めており、地元の食材で作り、食堂で使い、食品店で販売もしている。
担い手育成にとって、最後の食育が一番重要。食育を通じて地元の子から農業をやりたい、料理をやりたいという子が出てくるのが目的。食育部門は学校や地域の生活改善グループのお母さん達と連携し、その活動を通じて食べるというのはどういうことか、というプロモーションを常日的にやる部門。地域のコミュニティーマネジャーの役割も担っていて、地産地食を合い言葉に「育てる・つくる・食べる・つなぐ。」を地元の人たちと一緒にやっていくことを目指している。
それを実行に移す部門は、育てる(農業)・食べる(料理)・つくる(加工)・つなぐ(食育チーム)の4つ。具体的な取り組みとして、育てるチームは最近、80歳以上のおばあちゃんが一人でやっていたキウイ畑を引き継いで2年目。そこで、我々が無農薬・有機肥料に転換してキウイを育てるということをやり始めている。今、全体で3ヘクタールの農地があるが、その約7割が耕作放棄地を耕して復活させり、引き継いだ土地。役場と一緒にやっているので、農地が比較的借りやすくなってきている。
新規就農者を受け入れ育てて、地元の農家さんと連携し農作物をつくり、それを食べる部門(食堂・パン屋・食品店・野菜販売)、加工品チームが仕入れて、地元の生活者に届けていき、お金が循環していく。
で、私も親
上の子が小学校5年生、下の子が2年生。シングルのメンバーもいるが、総勢20数名以上のスタッフの中に6家族が関わっていて、みんな子供が2人いる。うちの子が一番大きくて10歳。4年後、うちの娘が高校に入学するっていう現実が待っている。中学校・高校を神山で行くのか、彼女の選択なのでどうするかわからない。
ですが、私は親として関わりながら、やっぱり町で高校に行ってくれるといいなと思って、高校の学科改正にも関わっている。最後に、家族、まちのみんなで子どもたちを育て、その土地のものを日々食べることで、愛着を育って欲しいなと思っています。
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以上、イベントで話してくださった内容をまとめました。
初めて、かま屋でお皿いっぱいに野菜を取って食べた時の美味しさは、今でも忘れていません。神山に移住して約半年が過ぎましたが、今でも、真鍋さんの言葉を借りて言うと、「まちの社食」で週2~3回、昼ごはんを食べています。
つい先日、お昼ご飯を食べにくと、たくさんの小学1年生と遭遇。まちの小学生が9月に種を蒔き、成長した葉物野菜などを収穫、かま屋に納品され、調理された自分たちの野菜を食べにきているところでした。こんな体験をした子どもたちは、将来、農業をどんなふうに見るようになるんだろうと思いました。
後編はまちの子どもたちへ、「種を蒔こう、種をつなごう。手を動かそう、実践してみよう。作り手から学ぼう、地域とかかわろう。日常に取り込もう、自分のものにしよう」をキーワードに食育を届けている樋口さんの話をお届けします。お楽しみに。
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【神山町と考える、これからの地域留学レポートシリーズ】
▶︎親としての葛藤。ぶっちゃけ進路はどうなるの?(原っぱ大学ガクチョー 塚越暁さん)
▶︎自分自身の価値基準はどこに?(原っぱ大学ガクチョー 塚越暁さん)
▶︎どこでも、住めばふるさとになる練習(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授 石川初さん) ▶︎神山の農業を次の世代につなぐ 食育の取り組み〜前編〜(フードハププロジェクト食育担当 樋口明日香さん)
【県内外から神山校への地域留学に興味をお持ちの方はこちらをご覧ください】
梅田 學 (神山つなぐ公社 ひとづくり担当)
2018年6月に神山町に移住。ひとづくり担当として、神山校、神山中学校の生徒が地域で学ぶため授業をコーディネートしています。 その他、毎月一回、孫の手プロジェクトで、神山校の有志のメンバーで高齢者の庭の剪定をしています。 休日は、2年前から始めたサーフィンを楽しんでいます。徳島の小松海岸、高知の生見海岸に出没中。
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