杉皮奮闘記Vol.13 今日は、イン上勝
住まい2020年12月8日
こんにちは。杉皮隊吉田です。
少し前になってしまいましたが、11/8の杉皮活動。
今回は神山から遠征して、お隣の上勝町と木沢村(現那賀町)に行ってきました。
上勝町には、茅葺きの古民家の修繕に取り組みながら、棚田が美しい地区の景観や文化を守り伝える活動をされている「かみかつ茅葺き学校」という団体があります。
*かみかつ茅葺き学校の情報はこちらやこちら*
最初にかみかつ茅葺き学校を知ったのは上勝町の広報誌でした。
「求ム!杉皮」
ちょうど杉皮をどうやって手に入れるか頭を抱えていた時代、衝撃的な見出しを神山町役場広報担当の駒形さんが発見!
その後、なんと夏の杉皮剥きWS情報をかみかつ茅葺き学校メンバーの方が見つけてくれ、矢治谷までお越しくださいました!!
※その時の様子は、杉皮奮闘記vol.03
なにやら上勝でおもしろそうな活動が・・・と気になっていたところ、いよいよ杉皮の葺き替えワークショップをするということで、今回参加させていただいてきました。
ワークショップは朝の9時から。
早朝の山越えに不安を感じる我々は木沢村のゲストハウス「杉の子」に前泊することにしました。
道中、寄り道して久しぶりに矢治谷の様子を見に行くと、、、
皆伐が完了して丸坊主。あんなに森の中の移動がハードだったのに、狭く感じる。
紅葉の時期になり対岸は杉エリアと広葉樹林のモザイクがくっきり分かるようになっていました。将来はここも紅葉が見られる森になっていくのでしょうか。
道中こんなものも発見
杉皮を剥いた痕跡。(のある椅子)
道端の展望台にて。
土須峠を越えて下ったり登ったり、夕暮れになって「杉の子」に着きました。立派な古民家です。今はここ一軒だけの集落だそうで、まさに山の中の中という立地です。
到着するなりさっそく小屋裏にあがり、杉皮チェックする隊員。
トタン屋根の下地に杉皮が使われていました。
神山の小屋でよく見られる屋根下地の杉皮は、細い幅でラフに剥いだ皮で表面を下にしているものを多く見ました。しかし、ここは板状に剥いだ材で、しかも裏面(木の中心側面)を室内側にしており、これは初めて見るタイプです。
小屋裏には古道具たち。すかさずテギガマチェックをする北山隊長。
残念ながらテギガマは無し。でも、杉皮製ナタカバーがあるではないか!
のこぎりや織物をする道具などを始め、深い山での生活が想像させられる道具がたくさんありました。神山で見るものと共通のものも多いですが、なんとなく少し違う雰囲気もあるように感じます。山を越えてのお隣というのは、おもしろい距離感なのだなと思いました。この感覚は翌日の上勝も含めて、今回私にとって特に印象的なものでした。今はついつい国道ばかり使う生活での地理感覚になりがちですが、山道からの地勢を想像するのは楽しくなります。
おいしいごはんと五右衛門風呂でゆっくりと静かな山の夜が更けていきました。
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さて、本題の杉皮葺きの日。
朝から山道を抜けて、上勝町は八重地地区にやって来ました。
この古民家「旧花野邸」の茅葺き屋根の下をぐるりと囲む庇(ひさし)が杉皮で葺かれており、本日の作業部分です。
屋根に苔が生えてそれはそれで周囲に馴染んだよい景色です。
木陰の部分だけ苔が多いのも素直でおもしろい。
でも雨漏りなどは困るので、杉皮の交換だけでなくその下の層もメンテナンス、傷んだ野地板(屋根面のベースとなる木板部分)の補修やルーフィング(防水のための水を通さないシート)の張替えも行なわれました。
今回集まっていたのは、
いつもここの修繕をされているという地元の方10名ほどのチーム、その中に一人大工さんがいてリーダーになっています。
かみかつ茅葺き学校の運営の方々、女性が元気です。
我々含む一般公募のWS参加者8名、若い方が多く市内からや阿南からの方もいました。
まずは、古くなった材を取り除いて落としていきます。
8年ほど前に葺かれたものだのだそうです。
最初のミッションは、落とした杉皮を捨てるものとまだ再利用できるきれいなものを分別せよ、とのこと。
貴重な材料なので大切に使いまわします。それに捨てる物も裏山に投げるだけ、土に帰るのでなんとも話が早い。廃棄物として搬出されるのは主に古ルーフィングのみです。破片を集めて比べるとこの人工物の破片がとても汚く見えてしまいます。
半分は苔むしているものも「こみきり」でカットし、残り半分を短い材として活用します。軒先の厚みを出すように重ねる材として使いました。
これうまくザクっと切れると気持ち良いです。
それはそうと、杉皮調達の大変さを身をもって感じていると、ほかの人が捨てるような小さなものも、もったいなくてついつい分類して保管してしまいますね。
やりすぎ注意。。。
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広報に「求ム!杉皮」とあった通り、今回使う材料は、古い家に保管されている杉皮がないか町中に呼び掛けて集まったものだそうです。
昔は各家が葺き替え用にストックを持っていたということですね。
使い道がなくなって仕舞い込まれていた物と、喉から手が出るほど欲しい人々、よい結びつきができたのがすごいなと思いました。
そして、我々皮の剥き方わかったので次の材料が必要な時はお手伝いしますよ、で、神山で困ったときはストックの融通よろしくお願いしまーーす!!なんて図々しい発想が生まれました~!
時々は近代の行政単位じゃなくて、生活文化単位で考えてみるとできることも増えるのかもしれないなあ。
と、まじめにまとめておきます。
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さて、古材降ろしが終わったらいよいよ葺いていきます。
まずは新しいルーフィングを貼って、その上に杉皮を並べていきます。
指揮をとる大工さんに従いつつも、地元のおじさま方みなであーでもないこーでもない言い合ってやり方が決まっていく瞬間がいい時間で、ふと作業の手を止めて眺めてしまいました。
神山で大工さんに教えてもらっていた重ね方ともまた違う。正解は一つではなく、時代やあるいは個の経験で改良されたり、建物の状況ごとに違うかもしれないし。そういうところがものづくりの醍醐味かもしれません。
杉皮を並べたら上から割り竹を打ち付けて押さえます。垂木のあるところに釘を打っていきますが、うっかりすると位置をはずして釘が効かない・・・。最初は下から皆でやーやー言っていましたが、だんだん下で垂直を見る人と上で打つ人が連携する体制が開発されて手際が良くなっていきました。
3段のうち2段ができたところで、庇の上に登らせてもらいました。
あぁぁ、谷の地形と棚田がいい風景、ここでお月見がしたいです。ここに座っただけでも大満足。
と、そんな遠い目をしたのもつかのま、何しろ落ちないように足を踏ん張るのだけでも必死ですが、大工さんの隣で葺き方の手ほどきを受けて杉皮を重ねていきます。
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そんなこんなで陽が落ちてきました。
今日のところはざっと全体に杉皮と竹押さえが乗ったところで撤収、続きは次週にするとのこと。
今回、杉皮を実際に葺く現場をみてやり方学ぶぞーと意気込んで参加させていだきました。
もちろんそれはありつつなわけですが、今回の庇補修のようにこの古民家の修繕のために地域の方々が集まって、それがひいては地区の風景を保つ種になっているであろうこと自体に興味を惹かれました。特別なものではないはずだけど、簡単になくなってしまうもの。そういうものこそ誰かの大変な努力があって存在しているなあと。と同時に、特別な「努力」ではなく現代においてどう生活の楽しみと地続きになることがありえるのかなあ。。。
そんなことをぼんやり考えながら神山に戻りました。
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最後になりましたが、
今日のお昼ご飯
今日のおやつ
ちゃんと作られたものはひとつひとつが美味しいなあ・・・
上勝のみなさま、貴重な経験をありがとうございました。
杉皮庇ができたら次はなんと!!茅葺き屋根を葺き替えるそうです!!
是非またおじゃましたいなと思いました。
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