Day 1 ルーさんと歩く山:上分/川又南岸
なんでも2020年12月5日
10月下旬、2週に分けてルーさんと上分の山の路を歩いた。彼は最初神山で、まずこの地区(川又)に家を借りた。その後下分に移ったわけだけど、「上分がすごく好きだ」と。「山の中にいろんな神様がいる感じがして」と話していたかな。
黒松神社から少し登ってゆくと、コンクリートを打った路が暴れている。
路面下の水の流れで、土が動き、コンクリートが自重で割れて…という次第か。水はものを動かしますね。
もう少し歩くと、谷側に石を積んだ土の路になる。こっちの方が施工時期はずっと古いはずだけど、とてもコンディションがいい(枝や倒木は折り重なっているが、路自体は良好)。
排水性能もいいし、素材は風化速度の遅い自然物だし。あらためて「石積み、素晴らしい」と思いつつ、同時に「これは無理」とも思う。よくこんな路をつくったものだな。必要だったんだろう。山の中の暮らしに。子どもたちも毎日歩いて、上の集落から下の学校へ通っていたんでしょう。
大きなコンクリートのかたまり。
これは結構もつのかな? 同僚のTさんは「砂防ダム、ほんまは要らないんちゃう?」とたまに漏らしている。どうなんでしょうね。でも、本来は川に供給され、その先で海辺をつくったはずの土砂が谷合に溜まっているわけだ。おそらく日本中で。勉強が要ることばかり。
立ち止まったルーさんが、「炭焼き釜の跡だと思う」と話している。
こういう「木の屋根が落ちて石造りの壁だけが残った、昔の生活の遺構」って、イギリスに多いはず。たぶん若い頃からそんな場所を訪ねるのが好きだったんじゃないかな。「歴史を感じられる路は楽しい」と言う。
「ここは桑畑だったんじゃないかな」とルーさん。
山の中に、営みの跡がいろいろ残っている。けど、路は途中でわかりにくくなったり、わかってもこんな感じ。
縁の石が主たる路の目印。これ(下)とか、環境にアジャスタブルで、カッコよかったなあ。何年くらい前の仕事だろう?
小さな尾根を下り始める。広葉樹の多い、明るい場所。ひとやすみ。
「昔の人が漆を採ったあと」とルーさん。そんな具合に、ときどきチョコチョコっと話しかけてくれる。こんなに太い漆の木がはえていたか。
この辺りは集落の薪炭林だったんでしょう。切り株も多い。人々はある時から突然山に入らなくなったわけではなくて、鹿の生息地が里に下がってきたように、少しづつ山に入る人・機会が減っていったんだろう。
ざっくり言えば「用がない」わけだ。山に。でもルーさんは「山の中の古い路を整備したい」と話している。「どんな新しい用をつくれるかな…」と思いながら下る。川又の車道の音が、少し聞こえてきた。
杉、ほぼ全部ひとが植えたわけだよね。当初は小さな苗だったとはいえ、凄まじいな(あらためて)。
もうちょい降りると、路が少し整備されていた。雨水の流れを整えている。
比較的近年(10年以内)の仕事の印象。
登って降りて2時間半くらい。いい運動だったけどまあいろいろ考えてしまう。でもみんなで入る山の中は、明るくて楽しい。また来週、同じあたりをまた違うメンツで歩く。Day 2につづきます。
西村 佳哲
にしむら よしあき/1964年 東京生まれ。リビングワールド代表。働き方研究家。武蔵野美術大学卒。つくる・書く・教える、大きく3つの領域で働く。元神山つなぐ公社 理事(2016〜21)。著書に『自分の仕事をつくる』(晶文社/ちくま文庫)、『ひとの居場所をつくる』(ちくま文庫)など。
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