国際交流プロジェクト 海外ツアーin Kamiyama イタリア編

学び2021年11月10日

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投稿者:松岡 美緒

2021年度の国際交流プロジェクトは、コロナの影響で海外の往来ができない中で企画しました。(詳しくはこちらから)

11歳から17歳までの幅広い年齢層の子どもたちが参加し、共に学ぶ機会になりました。その様子を少しご紹介します。

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イタリア編「マルゲリータと石を積もう」

神山の至る所で見られる石積みの文化。世界にも共通する伝統技術だということご存知でしたか?
下の写真は、イタリアで開催された石積み大会(!)の様子です。右はイタリアチーム、左は日本チーム。同じ石積みでも積み方がまったく違うのは面白いですね。

イタリア編では、まず神山で手を動かし石積みを体験した後、神山を何度も訪れたことがあるイタリア人女性マルゲリータさんと繋ぎました。開催を予定していた日が雨で延期となり、2日間予定していたこちらのツアーも1日に詰め込んで実施することに。午前と午後に分けてお伝えしていきます。

 

午前

神山の霧が漂う上分地区にある江田集落。車から降ろされた一行は、神山側の案内人、NPOグリーンバレー伊藤くん(通称いっくん)と城西高校神山校の寮あゆハウスのハウスマスターをしている兼村雅彦くん(通称マサくん)と共に、水路沿いの古い小道を歩きながら目的地に向かいます。水路から水が溢れ出ていないか確認しながら、400年以上経った石積みの風景を小慣れた歩き方でずんずん進みます。子どもたちは透き通る水が流れる水路、時々おかしな作りの水路を興味深そうに眺めながら歩きました。

実際に落ち葉が詰まって水が溢れ出す水路を直すマサくんをみたり、石積みが崩れて畑ができなくなったいっくんの話を聞いて「守ってきた人への尊敬の念を感じた。コンクリートでやってしまえば簡単だが、時間をかけて石を運び手で直す。風景が人々の手によって守られている」と高校生が話してくれました。

辿り着いたのは江田集落の入り口を飾る枝垂れ桜が植る石積み。大きく中心部が崩れています。いっくんやマサくんが事前に水道を作ってくれていたり、グリ石や大きな石を集めて分けておいてくれたりしたおかげで、スムーズに石積みがスタート。石積みに長く関わってきた2人の解説を聞きながら、まず石を持ち上げる練習、そして積むために必要な手順を理解していきます。

「石の形に注意してみて。厚みがある方が手前、薄い方が奥だよ」

「この石は今この窪みでは使えないかも。もう少し合いそうな大きさを選んで」

石の選び方や向きの調整が素人では難しく、何度も丁寧に解説を受けながら、作業を進めます。

途中、大きな石の間に詰めるグリ石と呼ばれるサイズの石が足りなくなり、協力いただいた西森さんの集石場から集めさせていただいたり、石を砕いて小さくしたり。「グリ石お願いしますー!」「小さいサイズのグリ石が必要だ!」みんな声を掛け合って共同作業が続きます。


「先輩後輩関係なく石積みができてよかった」と語る高校生。最初は石積み作業に戸惑っていましたが、慣れてくると人一倍チームに冗談を交えた声がけをしながら、動いていた彼。同じ高校でも学年が違うとあまり関わりがないそう。あえて歳は聞かずにプログラムを始めたのがよかったのかもしれません。実際に手を動かすことが乗り気でなかった唯一の小学生参加者も、高校生が上手に話しかけてくれて作業に一体感が生まれました。

終了時間が迫る中、2時間かけて石積みが完成!この短時間でできるか、企画側も予測がついていなかったのですが、無事に完成した風景を共有できたことに感謝です。

「普段高校では、自分が並べた石の向きがなぜ間違っているのか、など細かいフィードバックを受け取れる機会が少ないので、技術について深く学べたのがよかった」と石積み経験者の高校生も満足したようでした。

空石積み(石だけで積む)、練り石積み(石と石の間にコンクリートを入れて積む)、そしてコンクリート擁壁。今回はじめてそれぞれの違いを知った高校生。「どっちが丈夫なんだろう?」

「コンクリートの耐久年数は60年ほど。一度壊れるとゴミになってしまうよね。それにコンクリートはほとんどの場合が輸入している。石なら山で手に入るし、壊れたら積み直せばいい」いっくんが解説してくれます。

「壊れたらまた積み直せばいいっていうのは最近気がついたことなんだ。すごく単純だけど」

そのポツリと言ったいっくんの言葉が印象的でした。自分の手に技術があれば、壊れてもただ直すだけ。遠くから二酸化炭素を大量に排出しながらコンクリートを運ぶ必要性もないし、ごみをどこかに捨てに行く手間もない。私たちがこれから作っていく世界もシンプルで美しい世界だといいなぁ。

改めて石積みの役割を振り返ると、子どもたちからはこんな言葉が。

「町の風景の一部になっている」

「山の斜面を平らにすることで、畑で食料を作ったり、家を建てることができる」

「水はけの良い環境を保つことで土砂崩れから守る」

 

午後

場所は変わって鮎喰川コモン。コモンに入るとスタッフ吉澤公輔(通称ハムくん)がイタリアの音楽オペラでお出迎えしてくれました。気分がかなりイタリアにスイッチされていきます。

繋ぐ先は、イタリアの南にある小さな村に住む、マルゲリータさん。彼女はイタリアで石積みの文化の継承のため、石積みを学ぶコースを主催したり、石積みについて講演したり、国内外を奔走している女性。自分で育てたブドウで自家製の白ワイン作っていた父親と、科学者で村の川が地域の企業によって汚染されていった時代、環境保護のために立ち上がり美しい川の復活のために働いた活動家の母親。そんな両親に育てられたマルゲリータさんはどんな話をしてくれるのでしょうか?

「マルゲリータは先輩と呼ばれるのが好きなの」と教えてくれたのは、マルゲリータさんの友人、神山在住でイタリアに留学経験のある吉澤なつみさん(通称なっちゃん)。実は、マルゲリータさんは大の日本好きで、犬夜叉やセーラームーンなどに詳しく、何度も来日しています。10歳の頃からアニメに出てくるキャラクターのようなカツラをねだったほど、髪の色を変えたり、ユニークなものを身につけるのが大好き。

なっちゃんにイタリア語の練習をみてもらってから、爽やかな青いカツラで登場したマルゲリータに自己紹介です。

「ミキャモ 〇〇(私の名前は〇〇です)。オ クインディーチ アニ(私は15歳です)。」という子どもの自己紹介に対し、「おおお、15歳なのね!」と返してくれるマルゲリータの反応を見て、自分のイタリア語が伝わっていることに驚き、そしてはにかむ子どもたち。

高校生「イタリアでの生活はどんな感じですか?」

「とても小さな村だから、みんな自分が何してるか知ってるのが時々疲れちゃう。でもとてもいい景色よ。葡萄畑で作業をしたり、石積みを教えたり、お土産屋さんを経営して、生活を営んでるわ」

小学生「どれくらいの規模の石積みをやってたことある?」

「かなり大きい石積みをやっていたこともあるし、そういう時は数ヶ月かかるの」

「石積みを学びたい人はイタリア各地から集まる。その研修を見に来てくれた人の1人が、今の私のビジネスパートナーでブドウ畑を管理してくれている」

「石積みは生物多様性にも大きく貢献しているの。石と石の間に隙間があるからマンションのたくさんの小さなベランダが付いているみたいでしょ。そこに蜂やカマキリなどの益虫が住むことができれば、オーガニック栽培にはもってこいよね」

様々なイタリアの石積みを見せてもらった後、チームに別れ、石橋を作るゲームで対決!いっくんやハムくんなど石積み経験者率いる大人チームは、子どもより盛り上がりながらの参戦です。

(出典Pinterest)

石橋ゲームに必要な材料は、2つ。今回は半分に割った太い竹と、城西高校神山校の生徒が鮎喰川コモンにギフトしてくれた積み木を用意しました。ルールもシンプルで、竹を橋の土台とし、積み木で橋を作り、最後に土台の竹を引き抜いても橋が崩れなかったら勝ち。どのように石橋が作られているのか、力が働く方向を解説したり、写真を見せたりしましたが、イメージがわかず子どもたちは苦戦。

「どういう風に並べたらその積み木は安定しそう?お花の花びらのように放射線状に並べてみて」マルゲリータさんのヒントをもとにどんどん橋が完成していきます。大盛り上がりだった大人チームが先にあがり、美しい橋を作り出しました。2つあった子どもチームのうち、1チームは土台を引き抜きながら壊れてしまいました。「重さや支えが足りなかったみたいね」とマルゲリータさん。最後の1チームは橋の形を整えて竹を引き抜くと・・・成功!

「どんな教科が石積みに関係していると感じた?」

この問いに子どもたちからは、歴史、社会、神山創造学、数学、物理、家庭科、人類学、、、などが挙がりました。1つの技術に様々な分野が含まれていることがわかります。

今の自分がわくわくすることに、学校をどう使えると思う?」とマルゲリータさんは問いを重ね、自分のエピソードを話してくれました。

「多くの子どもたちがなぜ今自分が学校に通わなければいけないのか、理由も分からず苦しんでる場合が多いと思う。私は絵を描くアートの道に進みたくて美術系の高校に行きたかった。でも母親が高校までは基礎的な知識を取り入れて欲しいと言って、その道に行かせてくれなかったの」

「その時は悲しかったけど、高校で身体の作りや物がどうやってそこに存在しているのかという物理の視点などを学んだ後、大学で絵を描く時、全ての知識が生かされていると感じた」

「私たちはみんな料理人だと考えてみて。今学校では、料理の材料を1つ1つ学んでいるところ。例えば、材料を知り、1度ラーメンの作り方を学んだら、パスタの作り方もなんとなく想像できるじゃない?自分の人生で好きな料理をするために、今色んなことを学校で学んでいるとイメージできれば、学校のシステムが私たちに何かを押し付けているという見方から脱出できると思うの」

子どもたちからは

「最初石の角度などを直されても腑に落ちなかったが、確かに物理やモーメントを考えれば納得できることも多かった」

「様々な角度から石積みを体験し、初めて石積みが楽しいと思えた」

「自分も絵を描くのが好きなので、今はつまらないと思っている授業があってももう少し真剣に取り組んでみたいと思えた」

などの感想があがり、石積みから日常が繋がった瞬間を垣間見ることができました。

最後はなっちゃんが焼いてくれた、マルゲリータさんが住む村に縁のあるレモンケーキ(トルタ ディ リモーネ)を、芭蕉の葉に乗せて食べました。美味しさに感動してケーキの名前をメモしている高校生がいたり、また石積みやりたいなぁという呟きが聞こえたり、イタリアを存分に味わった彼ら。レモンの香りやイタリアの余韻と共にマルゲリータさんのメッセージが誰かの心に残っているといいなぁ。

 


海外ツアーin Kamiyamaを終えて

「美味しい」「楽しい」「美しい」「自分らしい」を企画の中に散りばめた結果、香りや味、風景が混ざり合って、学びが不思議なグラデーションを形作りはじめました。子どもたちは、それぞれの学びたいものを持ち帰ってくれたのではないでしょうか。神山/徳島で協力してくださった特別ゲストたちも、海外から繋がってくれた講師たちも、それぞれの熱い想いを子どもたちに分けてくださったおかげで「本物さ」溢れる時間になったことは、言うまでもありません。ご協力頂いた全ての方に感謝申し上げます。(コーディネーター 松岡美緒)

コロナ禍で様々な活動が制限される中でも国際的な経験を子どもたちに、との願いから今回の企画が生まれ、たくさんの方々にご協力をいただき実現することができました。いま世界で起きていること、長い時間をかけて培われてきた風景、未来のために誰かがやっていること・・・。たくさんのヒントが詰まったこのツアーから、参加した子たちはそれぞれに自分のいまいる環境と海外とのつながり、そして過去からの積み重ねを感じとる機会になったのではと思います。(神山つなぐ公社 森山円香)

2017年度から始まった国際交流プロジェクトですが、昨年度からコロナの影響で海外に往来できない中で、オンライン交流を企画し、多くの方々のご協力をいただき実施することができました。交流を通して海外のことだけでなく日本や神山のことを改めて知り、また日本との文化の違いなど様々な発信をしたと思います。それらの中で子どもたちが得た気づき・経験などが、自分自身を見つめ直すきっかけとなったのなら幸いです。(教育委員会 井上亮太)

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ほかの海外ツアーの様子もぜひご覧ください。
▶︎ ミャンマー編「今と昔にタイムトラベル」
▶︎ アメリカ編「みちくさレストラン」

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松岡 美緒

1992年東京生まれ。家族の転勤のおかげで、沖縄や石川など日本各地の自然の中で時間を過ごす。日本の難民問題、消費社会に搾取され続ける第三世界の現状を知り、イギリスで国際開発学を専攻。平和構築を目指したパキスタンのNGOに従事するなど、世界中の農村を旅するうちに、食を中心にいのちの手触りを学ぶ学校菜園(Edible Schoolyard)に出会う。日本帰国後、子どもたちと自然を繋ぐパーマカルチャーデザイナーに。現在、東京から徳島県神山町に移住し、「play garden」を屋号に、循環する暮らしを実験している。社会の枠にハマらなくてもいいと決めた子どもたちとの出会いをきっかけに、森の中に「おいしい」「楽しい」「美しい」子どもの居場所づくりを計画中。みっけ主宰https://note.com/mapisfullofknots/n/ndc81adf20d16 鮎喰川コモンでスタッフしています。神山で古民家を改築中。

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