空き家のミカタ_vol.7 雨漏り

住まい2023年12月25日

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投稿者:移住支援センター

 こんにちは。神山町移住交流支援センター吉田です。今回はお家の大敵、雨漏りについてです。お家の脅威は地震や火事など様々な事象があり、それに比べて雨は一見小さいようですが日常のこと、継続すると大きな影響力になってきます。

こちらの写真の例は、二階屋根のトタン板が損傷して水が入ったことで・・・
空いた穴(ブルーシートで塞いでいる青色が見えますね)の周囲の屋根が腐り、二階天井が剥がれ・・・

その直下の二階床が腐って抜け、地面まで到達しました。

 下から見上げた様子です。屋根に小~さく空の光が見えているの分かるでしょうか、最初の写真の屋根です。雨で地面が湿っぽくなるとシロアリを呼び、さらに傷みが進行します。


 こちらの事例は、屋根周りと梁が腐り屋根の重みを支えられなくなりました。壁がぐにゃっとなって、よけいに雨が入るようになりました。

 最初に何らかの原因で雨漏りが発生
⇒その部分の木が腐る。常時濡れているとシロアリを呼び寄せることにも。
⇒別の所に穴が広がったり、家が歪んで雨が入る隙間がさらに大きくなる
⇒たくさん雨が入るようになると腐る範囲が余計に広がる
というサイクルで、継続的な雨漏りの場合、加速度的に損傷していきます。普通に生活しているとなかなかここまでには至りませんが、空き家期間が長くなると、気づかれなかったり初期段階での修繕がされず、よりいっそう進行してしまうことにも繋がります。

 「屋根が家の寿命を左右する」とよく言われるのも納得です。修繕工事も大規模になりがちですし、住んでからのメンテナンスも大事ですね。

 それでは事例紹介です。いろんな「水(かな?)の痕跡」が見られることがあり、まずはそこからです。


水らしきものの痕跡集

◯天井仕上げが剥がれています
 一番わかり易いタイプ。天井の素材が突板やなにか薄いものを貼っている場合、その時点で雨漏りが止まっていたとしても一度濡れたら剥がれてしまいます。この事例では下の畳が傷んでいることからも水が垂れたことが明らかです。左の襖も水を吸った跡(茶色のムラ)がありますね。

◯天井仕上げにふにょふにょ感や水跡があります
 天井板材に水を含んだ形跡、素材によってはこのような出方をします。天井板が耐えても、もし天井を支える下地材が腐ったら、バサッと一気に天井が落ちることもあり得るかもしれませんね。

◯天井に水跡 無垢の木の板バージョン
 天井に水の跡があります。しかし、さすが立派な無垢板!! 前の二例とは違い一度濡れても乾いたら天井板としては健在です。ただ、もし恒常的に水が入り続けるようであれば、家を痛めていくので要注意です。

◯表に見える天井仕上げは無事ですが・・・
 この例は特別雨の強い日に天井裏に入る機会があったために、ぽたぽた垂れる水を目視して発覚しましたが、部屋内から見てもわかりませんでした。また、別の雨の日にもう一度見てみましたが、その時は垂れていませんでした。下まで染み込む前に乾いてしまう量・頻度なのか、どこかに逃げて解消されているのか。こういう場合は発見が非常に難しいです。写真は水が落ちていない日の様子、青矢印のところが水染み跡です。

◯壁に垂れた跡
   この二枚の写真の例のように真壁(柱・梁を露出させる日本の伝統的な作り方)で、しかも土壁の家では、水跡がそのまま表面に見えます。もし、少し新しい時代になり、大壁(表面に別の仕上材を貼って柱梁を覆っているタイプ)の家だと中で雨漏りしていても少量では気づかないかもしれません。
 一枚目の写真では天井板にも水が伝っている(白っぽくなっている)のも観察できますね。二枚目の写真では右上角のところで元々の黒い表層が剥がれ、水色で塗ったのかなと思われます。水を含むと表面の左官仕上げは剥がれやすくなります。

◯壁の仕上げがぶよぶよ

 大壁の家でも壁表面の材料まで濡れだすと、このように明らかに目に見えて気づくようになります。

〇床が湿っている
 写真はコンクリート土間の例です。昔の家のコンクリート土間は厚みが薄く地面の水気が滲んでいることが多いので、このように床が濡れているからといっても雨漏りなのか下からあがってきている水(湿気)なのか判断がつきにくいです。天井等に水跡がないかも合わせて見上げてみてください。床が木や畳の場合は、天井の跡として出した一番最初の例のように水跡は明らかです。


 次は、原因となりやすい事例集です。
 住みながらでも、注意して観察してみるとよいかもしれません。

〇瓦が割れる・ずれる
 これは雨漏りの原因としては一番イメージつきやすいですね。
 ちなみに、昔は瓦の下には赤土が敷いてありました。

 この写真は瓦を剥いだところ、瓦の下に敷かれた赤土と杉皮が見えます。少々の水なら土と杉皮が吸収して膨らんで、また土が乾いて、ということが繰り返されていたかもしれません。木も多少の水は吸収し、また乾きます。常時湿潤状態になるのは問題ですが、現代で一般的な水を吸わないルーフィング材を使った屋根のように入った水が少量でも離れた場所にまで走る、という現象は少なかったのかもしれません。

◯屋根の補修跡
 瓦屋根(室内から見ているので杉皮が見える)の下にトタン板が差し込まれており、雨漏りがあって応急処置したのではないかと思われます。

梁が腐っている&シロアリが入っていたのはトタンの近く、ということはやはり雨漏りしたのでしょうね。

〇屋根の継ぎ目の隙間
 かたちが変わるところや、素材が変わるところ。家を建てる時、職人さんたちも一番気をつけて作業しています。下の例では、この時には雨漏りは見られませんでしたが、板金や漆喰を使って継ぎ目を入念に作っていることが分かりますね。

 屋根に天窓があるときも継ぎ目になるのでウィークポイントになりがちです。

◯屋根の谷部分
 屋根の形が変わるところの一種ですが、屋根の形が谷になっていると雨漏り率が高いです。下の写真の例では谷部分の木材が腐って落ちていますね。板金が錆びて茶色くなっているのも見えます。そのうちそこも穴が開き、さらにたくさん水が入るようになるでしょう。

〇樋に穴があいている
 樋に穴が開いていることもよくあります。特に、軒先と軒先が重なってその間に谷樋がある場合、漏れたとき特に厄介です。状況としては先の例に似ています。

   増築部や室内でなくても納屋と母屋の間に多いパターンです。外だからマアいいやということでもなく、ここの水のせいでシロアリや腐食のスタート地点になりがちなので、要注意です。床が濡れると置いている家具・道具も腐りますしね。

 ちなみに、樋に穴が開いていなくても雨樋(谷樋)が落ち葉などで詰って水が溢れて下が水浸しになっていることもよくあります。

〇戸袋が壊れている・外壁板が壊れている
 戸袋の前板や外壁板は雨が直接壁にあたらないように守ってくれているものなので、もし割れていたら雨漏りの原因となり得ます。

 室内壁に水垂れ後がある場合、まずはその直上の戸袋や壁に侵入口がないかを見てみるとよいかもしれません。

〇敷居が腐っている・歪んでいる
 窓枠や敷居と壁との間に隙間ができると水が浸入します。下の写真の例では、窓の敷居が傷んで雨戸の敷居との隙間が空いています。雨戸を閉めていればまだいいですが、窓だけを閉めている状態で水が掛かればいかにも隙間に入りそうですね。この家では、この部分の下の梁は傷んでおり、原因のひとつになっている可能性はあります。

〇コンクリートブロック造の場合
 さて、センターの空き家紹介でよく出てくる時代の家では木造でもトイレやお風呂部分がコンクリート造やコンクリートブロック造だったりします。その場合は、コンクリートのひび割れや屋根防水層の経年劣化が雨漏りの発生原因となります。


 この写真のように、仕上げが剥げていると水の存在に気づきやすいです。照明や開口のところはコンクリートにひびが入りやすいですし、もしかしたら雨漏りかもしれません。ただし、このように仕上げが剥がれる現象は必ずしもすべて雨漏りではなく、湿気や結露のせいも大いにありますので、早合点も禁物です。


 最後に、雨漏りでない天井染みの事例を。
配管漏れや結露で水が落ちていることもあるので、雨漏りではない別の原因にも要注意です。
   この天井の様子は空き家ではなく、移住交流支援センターのある神山町農村環境改善センターです。天井裏の配管水漏れが原因。
   こちらモモンガの糞尿でした。この例、詳しくはこちら
ほかに神山で天井裏によくいる動物系だと、ネズミ・ハクビシン・コウモリ等もあり得ますね!タヌキは室内に住むのだろうか?人間にとっての空き家になっている時間が長いと動物が住んでいる可能性も高いです。


 いかがでしょうか。家の素材によっても水の顕れ方が違うし、台風やたまにしかない風の方向の時だけでその後は水が見られないかもしれません。原因の特定が難しく、根気よく対処を試しながら見守ることになる場合もあります。

 空き家に限らず今住んでいる家でも、できるだけ早く発見・対処して二次被害を防ぎ、家を良い状態で長く将来に引き継げるとよいですね。仮に家を壊すことになってもよく乾いた木は良質な古材として使えますし。きちんと乾燥状態を保ってあげられれば、素材としての木は人間の一生以上に長く持たせることができます。
 今回いくつかの事例パターンとして紹介したあるお家では、修繕工事のときに大工さんがぼそりと、
「この家は、せめてあと10年やなー・・・」
傷みの進行は続く中、仮に10年くらい前に手を入れ始めていたら、もっとやりようがあったのに、という意味のつぶやき、心に残っています。私は虫歯に気付いてから数年放置し、ようやく歯医者さんに行ったら神経まで抜く大工事という羽目になったことがあり、それを思い出してしまいました。。。
 日々のお家のお手入れが少しでもスクラップアンドビルドを減らせるかも!?あっというまに年末ですが、大掃除はお家の健康診断によい機会と思ってがんばります!

―――過去の記事――――――

・目次(空き家のミカタ_vol.0)
 https://www.in-kamiyama.jp/diary/70929/

・空き家のミカタ連載記事一覧
 https://www.in-kamiyama.jp/tag/akiyanomikata/

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移住支援センター

物件紹介から交渉、契約、地域への順応支援にいたるトータルサービスを提供。 「こんなところに住みたい」という移住希望者の要望と、「こんな人に来てほしい」という所有者や地域住民の仲介役を果たします。 「これがダメなら、あれはどう?」というような不動産屋さん的な対応はしません。 最適で、最善の組み合わせを実現するため、一件一件に時間をかけます。 家探しには忍耐が必要です。その忍耐力をお持ちかどうかも、マッチングの大きな要素となります。

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