空き家のミカタ_vol.8_1 屋根1:屋根さえあれば

住まい2024年4月8日

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投稿者:移住支援センター

 こんにちは。前回は雨漏りについてでしたが、今回は屋根そのものについてです。

 屋根はお家の姿の中でも最も気候風土を反映するかたちかもしれません。例えば、白川郷など豪雪地帯の合掌造りは雪が落ちやすいように急勾配になっている、というのは有名ですね。そして大きな屋根裏は養蚕の作業場になっています。また、集落で揃って東西向きの屋根になっていますが、室内環境をよくする日当たり・風向きに合っていることや屋根に均等に日が当たり茅を腐りにくくするとも言われています。建物単体の話だけでなく集落の環境に根ざした姿になっていることが分かります。
 神山の場合は、どんな特徴があるでしょうか。白川郷ほどには特殊なかたちはないように思えますが、雨が多い気候というのは一つありそうです。また、特に古いお家では昔の生活に根ざしたかたちが垣間見えるのは間違いありません。

 屋根を観察するときの基本情報として、まずは素材による屋根の種類をみてみます。

〇焼き物系(いわゆる瓦)
 ”日本の風景”というと瓦のイメージでしょうか。
神山にいて”瓦”というと銀色の風景を思い浮かべます。近くの名産地である淡路のいぶし瓦を使うことが多いのかな?
 瓦自体の形も時代の移り変わりがあります。空き家紹介で出てくる古いお家では、下の写真のような昔ながらの「丸瓦+平瓦」で葺かれているものもあります。今の一体型の瓦より陰影が深くて美しいですね。
昔の瓦屋根は下地が赤土でその上に置いてあるので、瓦がずれていることがありますが、割れていなければ瓦を置き直すことで戻せます。近年の瓦は赤土の代わりに防水のルーフィングシートを敷き瓦桟(木の部材)に釘などで固定しています。赤土でないタイプでも古い家だと軒だけを留めていたり、最近は全数留めるなど、時代変遷があります。焼き物である瓦自体は健在でもルーフィングのほうが寿命を迎えていることもあり、難しいところです。

〇セメント系
 高度経済成長期には安く・大量に作れるものとして、セメント瓦・コンクリート瓦などが出てきました。このタイプは防水コーティングが経年劣化していくため塗り替えメンテナンスが必要で、古い家の場合は修繕ポイントになりがちです。

 通称”スレート瓦”という言葉を聞いたことがあるかもしれません。今一般的にスレート葺きと聞く場合はほぼ人工的なセメント+繊維でできた瓦でしょう。ちなみに本来スレートとは天然石を薄くして葺いた屋根を指し、有名な例では東京駅などが天然スレートです。石の産地では、昔の民家でも石葺きが見られるようですが、神山では石屋根文化はなさそうな印象です。

この写真のようにセメント+繊維質系の素材で茅葺を覆っているバージョンもあります。

〇植物系
 時代をさかのぼれば、日本の風景は瓦ではなく、茅葺きでしょうか。瓦はお寺やお役所などの特別なもの、普通の民家は地場で採れる素材、となると茅・木の板・杉皮などで作ることが多いでしょう。茅の葺き替えができなくなり、現代で見られる茅葺屋根は金属板等で覆われていることがほとんどです。しかし茅を始め植物系のいいところは、傷んだところだけ部分的な修復がしやすいこと。一見弱そうな材料ですが、住み手のお手入れとセットになるとむしろ長寿命な素材ともいるかもしれません。
この写真の例は表面の金属板が破損し、中の茅が見え始めています。

 茅以外では杉皮葺きも時々見ますが、家本体というより簡易な小屋で出会う印象、下の写真では元の杉皮屋根をトタンで覆っています。

〇金属系
 今や日本の風景は板金屋根かもしれません!?
瓦より軽く、普及しています。しかし、薄い金属一枚なので素材単体としては瓦より外気温の影響を受けやすく雨音も大きい。車をイメージすると分かりやすいです。あと、軽いから地震には有利だけど、軽いために風の被害は受けやすい、何事も一長一短ですね。下の写真の例では下からの吹上風でトタン屋根がめくれあがっています。

一見瓦と間違えるような形に作ってある金属板屋根もあります。
 この写真の例では、赤色部分が茅葺を覆う金属板です。瓦型に似せていますが、瓦のように一枚づつに分かれておらず何枚分が一枚の金属として繋がっていたり、曲げる部分に皺があるのが金属板であるヒントです。下部の銀色部分の屋根は淡路瓦です。
 
〇樹脂系
 左の部分、このようなポリカーボネイト板の例だと分かりやすいですね。右側や壁のグレーの部分は金属の波板です。屋根から採光したい場合、透光性のあるポリカやガラスを使う選択肢が考えられます。
 左は新品の時、真ん中は古くなった様子、右は崩壊した様子です。ポリカは安くて軽くて明かりも取ることができてよいですが、紫外線での劣化も早い、これも一長一短ですね。

    この例の茅葺を覆った部分も実は・・・。近所の大工さんに聞いたらこれは樹脂系(この例の場合はFRP系)だとのこと。確かに、よく考えたら茅葺屋根の上に日本瓦を葺くのは現実的ではないか、、、と思い直しましたが、てっきり瓦かと思っていました。この写真には各種瓦のオールスターが登場です。見分け付きますか!?

〇コンクリートの陸屋根
 コンクリート造・コンクリートブロック造のときは、屋根が平らな「陸屋根」であることが多いです。塗装等の防水層を作り、屋根としています。上が洗濯物干し場など、登ることができるようになっていることもあります。
セメント系・コンクリート系の耐用年数については素材自体だけでなく、それを保護する塗装の劣化とメンテ状況がポイントになってきます。

〇屋根の下地
 上記たちは屋根表面の素材ですが、その下地の素材もいくつかのパターンがあります。
この例は瓦屋根ですが、下から見ると二種類の下地が見えます。もしかすると最初は全て杉皮+竹で、左側部分は改修されたのかもしれません。


 前回の雨漏りについての記事と合わせて読んでみていただけるとよいかもしれません。そして、詳しく気になる方はぜひそれぞれの素材を調べてみてください!

 ところで、雨樋。脇役っぽいですが、実際に住むとなると屋根の働きに関係の深いものです。
 空き家に住もうとすると、修繕の必要があることが多い部分です。外れていたり、穴が開いていたり、詰まっていたりして、家が湿っぽくなるところで漏れていれば逆効果です。コンクリの陸屋根やベランダでは、雨樋を詰まらせると、豪雨の時に水がプールみたいに溜まって、大変なことに・・・。でもスムーズに水を流すことができれば家を守ってくれるものです
 とはいえ、そもそも雨樋がなければ、葉っぱの掃除もしなくていい。また、屋根の先端で水が跳ねずに落ちるので、雨樋がない方が、屋根先や軒裏の木が腐りにくくていい、という考え方もあります。
 雨樋を経由した水は、効率的に側溝や水路に到達するように繋げようとしますが、もしせっかく庭や農地がある場合、土地に浸透させてゆっくり時間をかけて川に返すということも大切な考え方です。樋からタンクに集めて雨水利用をするのもいいかもしれません。

・・・と、ここまでは一般的な基本情報でした。
次に、古いお家らしいもう少しディープな屋根関連アイテムたちをご紹介してみたいと思いますが、長くなりましたので続きは次回に。

―――過去の記事――――――

・目次(空き家のミカタ_vol.0)
 https://www.in-kamiyama.jp/diary/70929/

・空き家のミカタ連載記事一覧
 https://www.in-kamiyama.jp/tag/akiyanomikata/

 

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物件紹介から交渉、契約、地域への順応支援にいたるトータルサービスを提供。 「こんなところに住みたい」という移住希望者の要望と、「こんな人に来てほしい」という所有者や地域住民の仲介役を果たします。 「これがダメなら、あれはどう?」というような不動産屋さん的な対応はしません。 最適で、最善の組み合わせを実現するため、一件一件に時間をかけます。 家探しには忍耐が必要です。その忍耐力をお持ちかどうかも、マッチングの大きな要素となります。

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