【神山校のいま】新入生合宿レポート/後編

学び2024年5月12日

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投稿者:野村 勇希

みなさん、こんにちは。
神山つなぐ公社ひとづくり担当の野村です。

4月18日-19日神山校では、「新入生合宿」を実施。生徒、先生、公社のひとづくり担当メンバーで2日間、たっぷりと共に過ごしました。

なかなかに面白いものになったので、その様子をレポートします。

こちらはレポート後編になります。
レポート前編はこちら
レポート中編はこちら


新入生合宿2日目。

生徒たちは部屋の片付け、準備を終えた後、みんなで朝食。朝食はかまパン。いい天気の森の中で食べるかまパンは最高に美味しかったな。

パンを食べるKAIさんとこいちゃん。こいちゃんはご縁があって、合宿のサポートに来てくれました。

朝食を食べた後は、神山校に移動。午前中の時間をつかって、KAIさんによるプロジェクトアドベンチャーの時間。

最初はあたためるアクティビティからスタート。いろんな2人組で進めていきます。

2日目からは、ある程度あたたかい、安心できる場があったり、生徒同士の関係性もできてきました。なので、先生方は生徒たちの輪の中には入らず、少し離れて見守ります。また、先生同士でアクティビティをやって楽しんだりしながら過ごしました。

体育館の中でも2人組でかくれんぼ。あるものをうまくつかって隠れるなぁ。

続きまして、「ホグコール」というアクティビティ。体育館の端と端に分かれたペアが、互いに目をつぶり、声をかけ合いながら相手を探し出します。ペアがわかるように合言葉を決め、その言葉を頼りに相手を探します。

これ結構なチャレンジだと思うんです。関係性ができてきたとはいえ、まだ出会ったばかりの2人組だし、目をつぶって歩くことの慣れなさもある。ちょっとヒヤヒヤ、ドキドキな気持ちで見守っていましたが、彼らは楽しんでチャレンジしていたんですよね。すごい。

誰かとぶつかったり、なかなか相手が探し出せなかったり。でも、相手に出会えた時のなんとも言えない嬉しさや安心感。いいですね。いい表情。

続いて、「進化じゃんけん」。じゃんけんで勝ち続けるごとに、タマゴ→カニ→トリ→ゴリラ→人間と進化していき、人間になったら上がり。じゃんけんに負けてしまったらタマゴからやりなおし。

ジェスチャーをやるので、恥ずかしさもあると思います。でも、わいわいやっているうちにそういった抑制がとれてくるんですよね。それはこの場や人への安心感があるからだと思います。

話はそれますが、今回の新入生合宿では生徒同士、生徒と先生、公社メンバーの間、1年生全体にCゾーン(安心/快適に感じる物や事)をつくりたいという願いを込めていました。

学びはチャレンジをすることで得られます。そして、チャレンジはCゾーンがなければ生まれません。クラスの中が、人のことをバカにして笑ったり、陰口があったり、そんなネガティブな状況だと、発言さえ恐くて躊躇してしまいますよね。

今後、学校やまちに出て学んでいく。それぞれが、それぞれにとってのチャレンジを積み重ね、ありたい自分に近づいていく。そんな状況になるために、まずはCゾーンをみんなでつくっていきたいんです。

以前、KAIさんから、Cゾーンをつくるために5つの要素があると教わりました。

ただただ遊んでいるではなく、実はCゾーンをつくっていくための要素がアクティビティにはふんだんに含まれています。

また、KAIさんはアクティビティを思いつきでやるではなく、どんな順序でやるのかを事前に考えていました。当然、その時の状況をよく観察し、順序を入れ替えたり、あえてやらなかったり、予定していないものを入れたり。そういった調整を現場でやっているようでした。

他にも、場の熱量が上がる動きのあるアクティビティをやった後は、動きの少ないものをやったりと、動静を使い分けているようでした。

きっと意図していていたり考えていたりすることは、まだまだあると思います。講師のあり方、立ち振る舞い、声量・声色。何をどこまで話し、話さないのか。参加メンバーの反応、表情、出てきた発言…。いろんなことを感じ取りながら、場に働きかけていく。その場をどうつくっていくのかということは、いやぁ奥が深く、とても面白く、そして学びになります。

まずい。話がそれ過ぎてしまいました。戻ります。

さて、次が最後のアクティビティになりました。彼らにとって最大の試練になります。

「一番星」というアクティビティ。4つのグループに分かれ、1グループ6人で円をつくってロープを持ちます。

ロープを掴んだ手は離さずに、移動をして、星型をつくります。なんだか知恵の輪みたい。

まずは練習の時間。どうすると星型になるのかグループで考えます。

うん、面白い。課題を解決するためには当たり前ですが話し合いが必要です。積極的に発言する人、とにかく動きまくる人、うーんとじっくり考えている人、理解がついていかずに混乱している人。それぞれの特徴がよく現れます。

難易度がグッと上がるので、それぞれの足並みがズレてきたり、「もういいや」とか「誰かがやるでしょ」とか、最後はなんだかげんなりになりがち。

でも、この表情。

いやぁ、彼らは楽しめちゃうんですよね。

そして試行錯誤の末、星型ができたグループがちらほら。偶然できたところもあって、どうやったらできるのか、再現できるまで練習します。

はい、そしてここからが本番。

KAIさん「では今からが最終チャレンジ本番です。前にトランプを置いています。よーいスタートの合図があったら、それぞれが1枚のカードをめくり、同じ柄のメンバーで集まって、ロープを丸型から星型にしてください。できたらゴール地点に移動し、全員が到着したら終了。そして、これはタイムアタックです。なるべく早いタイムを目指してください。」

練習したメンバーと違うメンバーでのチャレンジ。難しくなりそうな予感。

KAIさん「それではいくよ!よーいスタート!」

始まりました。関わる人が変われば、発言する人が変わったり、やり方が違ったり。

最初のチャレンジは、すぐにできたグループと、苦戦するグループに分かれました。

そこで起きていたことで印象に残っていることが、2つ。

まず1つ。早く終わった生徒は「あれをこうするともっと早くできるよね。」「次はこうしたらいいんじゃない?」と何人かで作戦会議をしながら過ごしていました。

そんな中、なかなか終わらないグループを待ちきれず、生徒の数名が遊び始めていました。その様子を感じながら、僕は気になるなぁと思っていました。

それ自体は自然なこと。そうだよなぁとも思います。でも、気になる…。

そんな時に、一人の生徒が「がんばれー!」「ファイトー!」と声を発しました。そうすると他のメンバーもだんだんと、チャレンジを続けるメンバーに関心を寄せ、応援したり、アドバイスを伝えたり。

そして、苦戦していたグループの達成を拍手で祝福し、

あたたかく迎える。

いやぁ、なんて力を持った子たちなんだ。こちらが声かけせずとも、自分たちで気づき、行動していくことができる。

そして2つ目。

最後までなかなか達成できないグループ。その中で不満を持っているような表情の生徒がいました。活動中、「こうしたらいいんじゃないかな?」と発言していたものの、周りの生徒が受け取れず、アイディアが流れていってしまって…。いろんなやり方で星型をやってみるが、うまくいかない。なかなかグループでの協力ができていないようでした。

時間がかかったものの、それでもなんとか達成。他の生徒がゴールに走る中、意見を受け取ってもらえなかった生徒はうつむいて、トコトコと歩いてゴール。周りの生徒はそれを見て、なんとも声がかけられない状況。

おぉ、大丈夫かなぁと心配な気持ちに。

そこでKAIさん、トランプを準備しながら「諦めない。諦めたらそこで試合終了だよ!」と。

安西先生!?!?(漫画スラムダンクの安西先生のサンプリングだと思います)

続けてKAIさん「今のタイムは◯分◯秒でした。じゃあ次のチャレンジいくよ!」「よーい、スタート」と。

さっきの生徒は…

走り出してたんですよね。そして、次のグループで積極的に発言していました。

うおぉ!なんなんだ!すごい!!すぐに切り替えられるのか!

その生徒の、他の生徒の、力強さ。そうさせた場の雰囲気。印象に残った出来事でした。

その後も声をかけ合って、

何度もチャレンジして、(すごい躍動感…!)

順調にタイムも縮め、最大の試練も乗り越えました。終わった後も、なんだか余韻が残って、いい雰囲気。

そして「一番星」の振り返り。

KAIさん「みんなで同じチャレンジをやりました。共通体験だよね。でも、感じたことは人それぞれだと思う。それを前提に、感じていることをただ話す、それをただ聞く。共感OK、自分とは違うなっていうのもOK。でも、評価はしない。気になったところがあれば質問してもいい、でも、答えなくてもいい。」

そんな話があった後、ただ話す、聞く時間。

その後は2日間、新入生合宿全体の振り返り。

まずは「しるらないカード」を使っての振り返り。こんなカード。

「この2日間を表すカードは?」「このチームを表すカードは?」これらのお題に、これだなと思うカードを1枚ずつ選び、近くの人とおしゃべり。

2日間の振り返りはここまで。
ここからは今後のことを考える時間。

「3年後、卒業する時にありたい姿は?」
達成目標ではなく、自分がどういう人でありたいかを考えてみる。一人ひとりが好きな場所でじっくり考えてみる。共有もしない。

そしてKAIさん「それぞれが、自分がありたい姿を考えてもらって、書いてもらいました。なので、ここには24通りのありたい姿が集まったね。次に考えてもらいたいのは、それぞれのありたい姿に近づくために、この1年生全員のチームで大切にしたいことは何かなってこと。いくつでもいいから出してみよう!」

それぞれが考え、場に出していきます。

たくさんの、大切にしたいことが出てきました。

みんなで眺めて、少し交わし合った後、KAIさんからのメッセージ。

「2日間ありがとう。みんな一人ひとり、とっても力があるなと感じました。最初からいい雰囲気で、楽しかったね。

これだけは伝えておきたいんだけど、今後の3年間、学校生活の中でいろんなことが起きると思う。当然、うまくいかないこと、辛いことも起こると思う。

でも、その時に諦めない。いい?絶対諦めない。とにかく徹底的に話し合って、話し合って、これでもかって話し合うこと。そうすればきっと大丈夫。それを忘れないで。

本当に2日間ありがとう。またみんなと出会えるといいな。その時を楽しみにしてるね!」

そんなメッセージを受け取って、2日間の新入生合宿を終えました。

1年生のみんな、神山へようこそ。僕ら大人たちも、たくさん話し合って、みんながありたい姿に近づけるように、全力でサポートしたいと思っているよ。


以上です。ここまで読み進めてくださり、ありがとうございました。

この先、うまくいかないこと、辛いことも間違いなく起こるだろうけれど、その時に諦めない。徹底的に話し合う。難しい、本当に難しいことだと思います。だけど、この2日間の彼らの姿を見ていると、彼らならきっと大丈夫だなと。なんとかするんだろうなと。そんな感覚を持てた、全員で共有できたような時間でした。

その後の大人たちの振り返りでは、感想を共有した後に、新入生合宿で得られたものを、今後どう繋げていくかを話し合いました。

「もう少しそれぞれのことを知れる時間があるといいかも。」「それぞれの個々の違いを実感できる時間もつくってみたいな。」「感情を取り扱う場が欲しい。」「共通体験の機会を積み重ねていけるといいんじゃないかな。」「たくさんの生徒がリーダーを経験することが必要だと思う。」

いろんな要素が出てきました。これらの要素を今ある活動に取り入れようとなっています。

最後に、講師のKAIさん、いい時間、きっかけを届けてくださり、ありがとうございました。こいちゃん、りのちゃん、サポートしてくれて本当に助かりました。お世話になったまちのみなさん、いつもありがとうございます。先生、公社メンバー、お疲れ様でした。引き続きやっていきましょう。

新入生合宿のレポートは以上になります。

《おまけ写真》

この前の授業では、みんなで川に行きました。来週はまめのくぼでごはんを食べる予定。共通体験の機会をつくっています。

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野村 勇希

のむらゆうき/福岡県田川市出身。公社ではひとづくりを担当。高校との連携や、高校の寮「あゆハウス」に関わっています。

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コメント一覧

  • あれ? 卒業したはずの理乃ちゃんの姿が

    2024年5月13日 09:19 | 河野公雄(ニコライ)

  • ニコライさん、読んでくださりありがとうございます!りのちゃん、参加したいと連絡をくれ、この日のために神山に帰ってきてくれたんです。

    2024年5月13日 16:28 | 野村 勇希

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