空き家のミカタ_vol.10 分解者シロアリ

住まい2024年11月26日

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投稿者:移住支援センター

こんにちは。
 前回床下の回ではうるさいほど湿気湿気言っていましたが、湿気・水気があると木の腐食と共にシロアリ被害を拡大させるからです。もし前回をご覧になっていない方は、ぜひ先にそちらをチェックください。
シロアリは基本的に乾燥した空気に触れるのが嫌いで土の中に住んでいる虫なので、虫本体を見ることは稀ですが、もし家に以下のような現象があったら要観察です。

 ・細長い土の塊(=蟻道といいます)が基礎や柱に付着している
 ・ゴールデンウィーク頃に大量の羽蟻が発生する
 ・木材部分にシロアリ特有の形状の虫喰い跡がある

これらがどんな様子か、実際に空き家で見られた事例でご紹介していきます。

 ところで今回の記事でシロアリと呼ぶ神山での観察対象は在来種のヤマトシロアリが多そうという印象です。神山以外では既にイエシロアリやアメリカカンザイシロアリが普通に見られる地域もあるかもしれません。これらの種類のシロアリの場合は乾燥した木材にも進むなど、生態が違う点があります。みなさまもぜひ調べてみてください。でも、これからさらに温暖化が進んでイエシロアリなどの暖かい地域の種類が増え出したり、あるいは、外来種のアメリカカンザイシロアリがこれからもっと広まっていったら、神山でも空き家の観察ポイントは変わるかもしれませんね。

 なぜシロアリをことさら問題視するかといえば、食害が進行すると柱・梁・筋交いなど建物の構造上大切な部材にダメージを受けるからです。その建物を建てた時に想定した地震に対する耐力は無くなってしまいます。単に住み心地の話だけでなく家の安全に関わるからです。

 と、怖いことをいいつつ、とはいえある程度食べられても平常時にすぐに全体が倒壊することはなかなかありません。少しシロアリの跡があるからもうダメな家だと即パニックになる方もいますが、それも極端です。被害の程度と改修予算のバランスはありますが、駆除対策・補修・補強する手立ては状況に応じて考えられます。部材を部分的に取り換えやすいことが木造の特徴の一つとも言えます。

 シロアリは虫歯みたいだなあと思ったりします。

 虫歯が出来ても生活上ただちにどうこうないけど、そのまま放置して治ることはないし、進行して体全体の不調にまで関わることもあるそうです。表面の虫歯のうちは処置しやすいけど、歯の内部まで進行したら神経を抜いたり入れ歯になったり、大掛かりな治療になります。そして何より、予防策と早期発見が大事なことも同じですね。

 余談ですが、私は虫歯治療に行ったところ、出直しをくらい、衝撃を受けたことがあります。「歯磨きがちゃんとできていないから治療しても意味がないから今回は治療しない」と歯医者さんの先生に言われました。。。確かに。。。自分は家を見ていてせっかく修繕しても掃除管理があまりされていない様子をみると複雑な気持ちになりますが、歯医者さんの先生を同じ気持ちにさせてしまったんだなと反省しました。


それでは、シロアリ食害の跡の事例集です。

〇雨漏り箇所にいた


 雨漏りと腐食菌とシロアリはセットで登場します。雨漏りの回もぜひご覧ください。雨漏りが始まると加速度的に家の崩壊が始まるのはシロアリとの相乗効果が大きいと感じます。

    窓まわりも要注意。ここの場合は木製建具なので、雨の日に雨戸を閉めていなかったり、家の歪みでできた隙間でさらに水が入ったかもしれません。アルミサッシの場合でも、結露で湿っぽい環境が作られる可能性もあります。

〇床下・床にいた


 こちらも定番。もともとシロアリは土の中に巣があるので、木が土と近いと食べ物として発見される率が高い。

〇石積側の部屋にいた、北側の部屋にいた


 家の中でも日当たりの悪い側だけが被害にあっている事例はよくあります。また、傾斜地の神山では石垣に近接する家が多いです。この写真の例は石垣側の台所、表側の畳の部屋の床は綺麗な状態で、差が激しいです。とにかく湿気が大好きということが分かりやすいですね。

〇水回りにいた


 この写真の壁の裏はお風呂でした。特に、ユニットバスではなく昔ながらの在来工法のタイルのお風呂はきちんと水気を残さない使い方をしていないと湿気が浸透していきやすいです。この事例では漆喰が剥がれていますね。土壁・漆喰は湿気でボロボロになるので、それもシロアリが好む環境になっているサインの一つとして注視するとよいかもしれません。

 こちらはキッチンシンク台の裏の壁。水回りの場合、湿気や結露の他、配管からの水漏れが放置されている可能性もありますね。この家は他の部位は床下含めて比較的状態がよかったのに、ピンポイントでお風呂横・キッチンの裏だけ床が抜けていたりこのように柱が食べられていました。

〇建物の構造以外でも危険な被害


 この家は全体としてはコンクリート造の建物なのですが、木の階段部分が食べられています。建物が倒れることはないですが、もし段板の中が空洞であることを気づかずに踏んで階段から落ちたら大惨事です。家具が喰われているなんて状況も見ます。

〇物が詰まっている

黒色の木の土台が白っぽくなっている所、おそらく中はシロアリに喰われてスカスカになっていると思われます。この壁を建物の外側から見てみると・・・


 建物の足元に物が詰まっており、いかにもシロアリに好まれそうな環境・・・。
 特に木材を床下や家の近くに置いておくのはそこから呼び寄せるリスクが上がります。置いてある物に草が茂ると余計面倒になりますね。

 下の写真は押し入れの中に仕舞ってあった白いビニール袋に入れた布団です。
湿気で濡れており、中の布団が腐食(?)して謎の物体になっていました・・・。これではシロアリを呼んでもおかしくない環境です。

〇木以外も食べていた

空き家片付け中、倉庫に置かれた雑誌を持ち上げると・・・。この喰い跡形状で是非ピンと来てください。

 紙も元はといえば木。畳も元はといえば草。シロアリのご飯であるセルロースですね。段ボールはゴキブリの発生源にもなるし、不必要に置いておいて良いことが無いです。ちなみに、シロアリはアリではなくゴキブリの仲間だそうです。

〇羽アリ時期の様子

 現役のコロニーがある場合、羽アリが出ることでも気づくかもしれません。ヤマトシロアリの場合、ゴールデンウィーク頃に集団で出てきます。

〇シロアリ以外の可能性

 シロアリではない虫喰いの可能性もあります。キクイムシ(ヒラタキクイムシなど)という言葉を聞いたことがある方は多いかもしれませんが、他にもいろんな虫がいてそれぞれ好む樹種があったりするようです。例えば木に丸い穴がぽつぽつ空いているような喰われ方はよく見られます。シロアリ類の場合もあるかもしれませんが、ヤマトシロアリ以外の虫の可能性が大です。柱や木製建具をネズミがかじっていることも大いにあり得ますね!
 前述のシロアリ食害跡の写真と見比べてみてください。


 次は、シロアリがいた柱たちの例をさらに詳しくみましょう。

ぱっと見喰い跡が表面には見えていないですが、切ってみると・・・・・

 中がスカスカですね。土に巣のある彼らは乾燥した外気に触れるのが嫌いなので、下から木の中を伝わって上に上がってきます。

 コンクリート基礎で立ち上がりがある場合でも蟻道を造れば外の空気にさらされずに木の部分まで到達できます。蟻道の有無はシロアリ発見の重要ポイントなので、お掃除時・草刈り時に普段から気にしておくことが大切です。


 こちらは「蟻道」を作って柱を上がっている例。写真の柱にとりついているモコモコした細い線の中がシロアリの通り道です。ここは柱の足元に木材が積まれ、ちょうど柱の上の雨樋が外れて水漏れがしていました。
 つまり、上端下端をシロアリに好待遇な環境を整えてしまった例で、こんな理科の見本のような蟻道が形成されました。頑張って蟻道で登るわりに途中で柱の中を食べているのが少ないのは、この柱自体は古くから吹きっさらしで乾燥しており、途中は余り美味しくなかったのでしょうか?やっぱり水気がキーポイント。

 こちらの例は表面に化粧の板材でカバーされていましたが、はがしてみたらこんな喰われ模様になっていました。。。これはシロアリの典型的な喰い跡模様です。
 真壁(柱などの構造体が表面に出ていて目視できる)の家だとここまで進行する前に発見できますが、大壁(壁で構造柱を覆う造り方)の家や後から仕上げ材を貼り付ける改修をした家では剥がしてから中が崩れているのが分かるという場合もあります。もしビニール系の仕上げを貼っていたら余計に乾燥しずらいこともあるかもしれません。



 時々放置されてクシャっと崩れているお家を見かけます。腐食・シロアリと雨がかりの相乗効果の行きつくところですね。壁も土壁なので消えていき、屋根瓦・ガラス窓、設備機器あたりだけが残骸になっているのがよく見られます。
 こちらは植林された杉山の中に現れた石積みとお墓。かつて集落があった地区だそうです。近くにあった墓標をみると文化年間(江戸時代)の日付が書かれていました。ほんとに昔ながらの茅葺き・板戸・紙障子の古民家なら、放置されたとしても全て土に還ったのでしょうか、家の姿は跡形もありません。

 ここまでシロアリはお家の天敵という話をしてきましたが、では逆にもしシロアリがいなかったら??
 上記の江戸時代の家は人が消えた森の中に永遠に立ち続けているかもしれません。いや、そもそも、森に枯れた植物の残骸がそのまま積みあがることになるので、今私たちがイメージするような森の姿ではない。倒れた木や落ち葉の層に家が埋もれているでしょうか。。。いや、土じゃなくて木の残骸の上で生活しなくちゃいけない状況なので、今私たちがイメージする形の住居形式はそもそも存在しないでしょうか!?

 人間の住処にとっては大敵にみえますが、自然界からの観点からすれば木を分解して土に還す大切な役割を担っているともいえます。もしシロアリに食べられないように処理した建材を人間が使うなら、その処分まで最後まで人間が自分で責任を持たねばなりませんね。


――――――過去の記事――――――

・目次(空き家のミカタ_vol.0)
 https://www.in-kamiyama.jp/diary/70929/

・空き家のミカタ連載記事一覧
 https://www.in-kamiyama.jp/tag/akiyanomikata/

 

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移住支援センター

物件紹介から交渉、契約、地域への順応支援にいたるトータルサービスを提供。 「こんなところに住みたい」という移住希望者の要望と、「こんな人に来てほしい」という所有者や地域住民の仲介役を果たします。 「これがダメなら、あれはどう?」というような不動産屋さん的な対応はしません。 最適で、最善の組み合わせを実現するため、一件一件に時間をかけます。 家探しには忍耐が必要です。その忍耐力をお持ちかどうかも、マッチングの大きな要素となります。

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コメント一覧

  • まぁ・・すごい所まで入って、写真を撮っております!

    2024年11月26日 14:35 | 河野公雄(ニコライ)

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