山で暮らすこと2 自分たちで使う水は自分たちで。

手入れ2025年1月8日

アバター画像

投稿者:adachi

(神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス)

本記事はイン神山内のほぼ月報という枠組みの中で執筆しました。2019年〜2021年までは神山つなぐ公社が「まちの様々なプロジェクトのいま」を、2022年以降は神山つなぐ公社とグリーンバレーで「神山に関わるみなさんと共有したいまちのできごと」をお伝えしています。

以前に出した『山で暮らすこと 神山の「百姓きこり」たち』の続きのような記事になったので、「山で暮らすこと」をシリーズにしてみました。
ご興味があれば、ぜひあわせてご覧ください。

水を得る

神山の山や川沿いを歩いていると、よく目にする黒いホース。なんなんだろうと辿ってみると、民家につながっているものがあります。これは山から水を引くための、パーソナルな水道で、神山ではこうした類の方法で山の水を得ている人は少なくないです。

私の暮らす家も例外ではなく、周辺の7世帯で運営する山水を引いた私設の水道で水を得ています。キッチンやお風呂、トイレなどの蛇口をひねればゼロ距離で水を得られ、普段は、公共の水道と変わらない感覚で水を利用することができます。管理のため、毎年夏に水源地へお参りに行き、隔年11月には水道を利用する世帯の居住者でタンク掃除を行っています。

そんなこととはつゆ知らず、「⚪︎日に(水道の)掃除するけんね」。突然、玄関先に現れた下の家のお母さんからの置き手紙。移住してきて一年目の秋のことでした。

どんな作業をするのか、誰が参加するのか。
当日の朝、「何時から」とも「どこで」とも書かれていない置き手紙を頼りに、とにかく汚れてもいい服に長靴を履き、できるだけ厚着をして、いざ声のする方へ。
 

「水道」という名のタンク

掃除場所に到着すると、コンクリートの箱に、明朝体で「水道」と彫られたタンクが目に飛び込んできました。確かに水道である。

いつも家の前の道を散歩しているあの人も、初めてお会いするこの方も、10名弱の方が賑やかに寄り合っていました。顔が見えてきて、徐々に理解する「水道の掃除」。

掃除は、タンクの上でするということで、梯を使って登ります。山からやってきた水は、どうやら直接家の蛇口につながっているわけではなく、装置で濾過し、タンクに貯蔵しているものが各戸の蛇口に届いている。ということがわかってきました。

写真(上)がタンク。その上に、写真(下)の濾過装置が乗せられています。
掃除はこのタンク内を掃除する人と、濾過装置を掃除する人の二手に分かれます。
 

濾過した水を貯めるタンクは、前日から水を抜いて空にしてあります。
それにしても高い・・・

 

タンクの中で作業をする人が2人。箒で溜まった泥を掃き出したり、壁についた汚れを落としたり。暗くてうまく撮影できなかったけれど、すごく深くて、声が響きます。この時期の水は冷たくて、タンクの中はきっとひんやりと寒そう。

濾過装置の掃除

タンクチームとは別に濾過装置チームは、濾過装置に敷き詰められていた石を洗う作業に取り掛かります。タンクの上で、ひたすら石を洗う作業を2時間ほど続けます。バケツに綺麗な水を入れてブラシで擦ります。水を変えながら、汚れた石がその場になくなるまで続けます。

これらの色も形も様々な石は、近くの川からやってきたものです。この石たちは、何年くらいここで水を濾過し続けているのだろう。

綺麗に掃除した石は、ろ過装置に戻します。石の他に木炭も一緒に、石、炭、石、炭、石の順番で並べていきます。石は、下に大きくて粗いもの、上に小さくて細かいものに分けて敷き詰めます。炭は、バーベキューにも利用するホームセンターなどで購入できる木炭が6箱分。

濾過装仕組み


3槽に分かれていて、1〜3をじゅんに通って、下のタンクに溜まっていく。
タンクの掃除は、2年に一回。2つタンクがあるので、各タンクでは、4年に一回ということになります。
 

掃除に使用した道具は以下

・バケツ : 水をくんだり、道具を運搬したりするため。最近は、あまりブリキ製のものを見かけなくなりましたね。
・たわし : 濾過装置に入っている石や濾過装置本体の掃除用
・竹箒 : タンク内の掃除やタンク上部の木の葉っぱを払ったりするのに使用
・ブリキの手蓑(てみ)とプラスチックの手蓑 : 石を運ぶ、泥を出すなどに使用
・柄杓 : 何かと掬うのに使う

休憩を挟みながら、お喋りしながら、掃除が終わったのはちょうどお昼頃でした。
タンクも、濾過装置もピカピカに磨き上げてスッキリ清々しい気持ち。
みかんを食べて、お茶を飲んで解散。
 


ちょっと神山町の水道事情

神山町の水道普及率は約70%と低いです。残りの30%の世帯は、山水を引いたり、井戸水を利用したりして水を得ています。公共の水道以外で、水を得る方法は様々です。

❶個人個人で家に水源地から水を引いてくる方法
❷共同の水道:集落で管理運営する方法
❸井戸水を利用する方法:神山では少ないそうです。/湧水を活用する方法

神山の詳しい水事情については、グリーンバレーの移住交流支援センター・吉田さんが書かれている連載「空き家のミカタvol.4」をご覧いただくととても詳しく説明されていますので、そちらをぜひ。


山からやってくる水は本当にちょろちょろ。濾過されて、下のタンクにたまる。こんな大きなタンクに溜まって、止まることなく私たちの生活に使えていることが不思議です。
「果てしない。出しっぱなしはやめよう」そう思いました。

水の粒を見ると、水道が家まで来て疑いなく水が利用できることが、なんとありがたいことか。自分たちが使う水だと思うと、自然とやる気がでます。
一緒に水を利用している地域の方達にも、日頃から感謝の気持ちが湧いて、年齢関係なく一緒に暮らしを作れる嬉しさを感じます。草刈りはちょっとサボっちゃうけど、人と一緒にやるとなんでも楽しい。

アバター画像

adachi (神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス)

グリーンバレーのコンプレックス担当。兵庫県最南端の島・沼島出身です。 趣味は、細々とした作業です。どうぞよろしくお願いします。

adachiの他の記事をみる

コメント一覧

  • 現在、コメントはございません。

コメントする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * 欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください