短期連載コラム/第8回「本が読めるようになるまで、2時間。え、どういうこと?」
なんでも2023年11月1日
10月28日、早朝。
今日はコモンのイベント、最後の日。
いよいよこれで、終わってしまうのね。
寂しい。やすともゆうこです。
せめて今は、昨晩のとびきり素敵な時間を書いて、「思い出し楽しい」をしたい。
第8回の今回は、夜があなたに訪れる。
いや、朝よりは夜向けってだけ。でも飲み物は、出来ることなら携えて。
Back number
第1回「私がコモンで出会ったもの。」
第2回「司書になれなかった全ての大人たちよ、ここに集え。」
第3回「なんとも初々しい、コモンの新書たち。の香り?」
第4回「コモンで司書になる体験、後日談。私の長くて短い一日」
第5回「コモンの本棚、ついに擬人化しちゃうらしいよ。知ってた?」
第6回「みんな、100倍くらい考えて生きてんだって。コモンでただ本を読むだけ…って割り切るには、早すぎるんじゃない?」
第7回「そもそも、児童文学ってなんだろうね?私とそこから始めてみない?」
10月27日。
17:42。
慌ただしく支度を済ませた。結局息子、寝ないよね…!
「すまない。」そう声を掛け、夫に託す。
…出発!
エイを忘れて、一回もどる。休まない。
コモンに到着。まだ外は、薄暗い。
17:48。
中国茶!中国茶の、バーが、完成している!
神山町イチ流動的なその机は、みんなのバーとなったご様子。
今夜のコモンは、ココがないと完成しない気すらする。
「鉄瓶って、IHでもいいの?」
「直火の方がいいけど、一応大丈夫ですよ。」
そんなやり取りに耳を傾ける。
え、鉄瓶って、今や一家に一台ある感じ?買わないと…。
決めた!
わたし、このお茶バーのそばで、本をよむ!
17:58。
無事、今夜の読書スポットが決まりそうなところで、はじめまして、はやしさん。
ご自身のことを、私はまだよく知らない。
けれども、このコラムを2周もしてくれたという、稀有なひとだ。
「コラム、終わらないでください。」
「文章が好きです。」
どれほど嬉しくて、どれほど勇気をもらえたか。
伝えたいけれど、私の口はこんなときばかり、うまく回らない。
やはり文章を書きたいと思う。
ありがたい?…おそれおおくも?はっとする…。
うーん、知っている言葉の中に、すぐに見つけられる感情ではなさそうだ。
折を見て、形にしたい。
そろそろ「ただ、本」が、はじまる。
18:20。
20分経過した。なんと私は、本を読んでいない。
いや、実は前もって読みたい本は選んでいたので、手元にはある。
あるのだが、初対面を果たした中国茶への興奮もあってか、どうにも気持ちが落ち着かない。
プーアル茶、7年物。なんと、一度に20回も淹れることが出来る。一口目は、3回出し。
味の変化を確かめるという任務が追加された。
いや、本を読みに来て読めないって、なんですか。
読みましょう。
18:25。
「やさしいライオン/やなせたかし(フレーベル館)」
4ヶ月前、私はやなせたかしさんを、好きになった。アンパンマン、全巻ほしい。
そんな彼の、アンパンマン以外の作品。今夜の一冊目は、泣かずに読むことが不可避だったよ。
こっそり、しくしく。きっと誰も見ていないし、気づいてもいない。そんな「ただ、本」の空気に感謝する。
泣くのを見られることって、そもそもなんであんなに落ち着かないんだろう。
ザワッとした感じが、するんでしょう。
泣いている自分は、世界から、切り離されてしまったような気がするから?
この上がり切った(場合によっては下がり切った)心は、おそらくたった今、自分だけが感じているように、思われるから?
心配されてしまうかも。変だと思われて、しまうかも。そんな風に構えるのが、あの落ち着かなさの正体かな。
別に誰もそんなことは言わないし、何なら気にもしていない。
でもやはり、少しだけ…隠れていたい。
18:30。
「チリンのすず/やなせたかし(フレーベル館)」
二連続、やなせ作品。こういうのは、勢いのある時に一気に読んでしまうのが、好き。
そして本作、もはや絵本にあらず。じゃ、何?と聞かれると、なんでしょう…?
図書館からやってきているこれらの著作、今ならコモンで読むことが出来る。
と、CMを入れてみる。
18:45。
チリチリるるる…。
鈴虫?なんだろう、秋の虫。
コポポ、こぽ、こぽ…。
魚。フィルターの稼働音?
ホワンホワンしてるなぁ、今日のコモンの楽曲は。
バラ!ぱらぱら、人が本をめくる音。意外に大きい。
湯が沸いた。IHの電子音、衣擦れの音がする。
バーに来客の気配。
音が聞こえるように、なって来た。
18:50。
皆で本を読むこと。私にとっては、言葉を綴ることでもあるようだ。
読んで、書いて、読んで、書いて、見て、聞いて、また書いて…。
どうしようもなく書きたくて、頭の中を、垂れ流したいときがある。
今夜はそんな夜。
19:20。
「絵本 星の王子様/サンテグジュペリ・著、池澤夏樹・翻訳(集英社)」
ものは心で見る。
かんじんなことは、目では見えない。
心を少し動かして、意識を、焦点を、ずらしていく。
具体的には、目を閉じる。耳は、澄ましていてもいい。
そうすると不思議なもので、なんと「見えて」くる。書ける。目で見ているはずなのに、閉じないと見えないなんて、やっぱり、変なの。
あなたも、してみて。目を閉じる。本当に、その目は正しく「見えて」いる?
その言葉は、表現は、文章は、「本当」?
きれいなものは、みんな、何かを隠している。
さ、あと3パターンは、星の王子様を読まないとね。
だって翻訳されているんだから。絶対違う作品に、なっているはずだもの。
19:38。
やっと本が読めるようになってきた。
私には約2時間、必要だったようだ。はじめての興奮をなめちゃいけません。
数冊の本に落ち着かせてもらえたので、そろそろ、替えどき。
「みん棚」をチェックしよう。
プーアル茶、10回出しをいただいて、わずかに休め。仕切り直し。
19:43。
どの本が、次の相棒になってくれるのかな。
うん、これにしよう!温かな顔をした本、2冊。
「家が好きな人/井田千秋(リュエルコミックス) 」
みん棚、しまどじょうさんちの子。こんな夜には、ぴったりの作品だと思うんだ。
以前より、この作者さんのイラストが目に留まる機会が多かった。結局今回も手にしてしまうあたり、とても好きなのだろう。
紙での作品を見るのは、はじめてだな。すこし緊張。お茶バーで人のぬくもりを感じつつ、ページをめくる。
「私、その本買うわ!」私の手元を一目見るや、置き言葉を残す、スタッフともちゃん。
面白くて笑ってしまう。いつも楽しい人だ。
その一言で、「いいね」の気持ちを共有できた。
みんなで本を、読んでいる。
私はカエさんちに住みたい。
20:12。
新たな席選びも視野に入れよう。
はじめから、気になっていたの。
あのブラックホールが、なんと、カウンター席バージョンになっている…!
窓に向けると一気に個室感が加速し、恐れ多ささえ醸し出す。
いない!誰も、座っていない!失礼します!
ハァ、腰、めっちゃ楽…。居心地も大切だけれど、柔らかさも時には必要で。
人生のままならなさ、せわしなさ、私そのものといってもよい、席替えタイム。
「気持ちを表すことばの辞典/飯間浩明・監修、252%・絵(ナツメ社)」
みん棚、ふうせんかずらさんちの子。別名、一箱本屋「のりとりの」とも言う。
今の私は、感情を表すことばを気にしている。気にして、書いている。でも、ちょっと心細いので、力を借りたい。
そんな軽い気持ちで手に取って。
おや、なんだか開きやすいな、このページ。
ありがとう。私は、今の私の「言葉」を探してみることにするよ。
で、つまりこのメッセージを見つけた私は、「はっとした」のだと思う。思いがけない出来事に、目が覚めたようになること。
そして「痛み入った」のか?いや、過ぎるほどの親切…ではないか。
「はっと」して、「痛み入り」かけて、けれども「有難い」と感じた、これが一番近い気持ち。
つまり、ちょっと嬉しくなっちゃったってこと。
20:38。
おかしいことが一つだけある。夫が来ない。
私が家を出る前、たしか彼は、「あと30分くらいしたら行く~」と言っていた。
30分はおろか、もはや終了まで30分もないのである。
「ただ、本」の空気に夢中で、すっかり忘れてしまっていた。一時帰宅。
案の定、彼もある意味夢の中。お疲れさま。息子のねんね、ありがとう。
それはさておき、君の一番楽しみにしていた「中国茶、もう終わってしまうよ!」
一言で飛び起きて、コモンに到着するや否やお茶を3杯一気飲みという、離れ技をやってのける。
私の入り込んだ、本の世界、静寂の気配も、ここまで。
いつもの私、いつものコモンに戻ってゆく。
21:00。
ただ、本。終了。
「気が付くと、もう9時だったよ。だって今日は、本を読む日だったから。」そんな言葉を耳に残して、私も帰り支度。
はやしさんとすこし、おしゃべり。楽しみにしていた、イベント終わりの、おしゃべり。達成!
とつとつと言葉をつなぐ、稀有な人。今日は想いを伝えてくれて、どうもありがとう。
なんだか、終わってしまったなぁ。そんな寂しさを連れて、夫の隣、帰路につく。
家に帰ると、やっぱりいつもの私。
でもちょっとだけ、新しい私。
みんなは何を連れて、帰ったのだろう。
今回は、時系列ときどき浮遊しちゃう、そんな感じでお届けしてみたよ。
この企画の空気をできるかぎり、正確に再現したくて。つまりは最中、私の心象風景だ。
振り返ってみると、本というのは不思議な媒体。読む本を渡る度、心も影響されているのがよくわかる。
「のめり込む」その言葉が、この会にはとても良くお似合い。
もちろん、参加したみんな、それぞれ違った風景をお持ちだと思う。
ですから、あなたのお近くの参加者さんを捕まえて、おしゃべりしてみるのもまたヨシ。
ついでにあとで、わたしにも教えて。
はー、「思い出し楽しい」できました。
もうすぐ、終わりだ…。とやっぱり思っているけれど、もしかしたら増えてしまうのかも?そんな風に思わせてくれて、ありがとう。
終わらない。
アテにならないかもしれない次回予告
「タマシイがどこかへ行ってしまって、体だけで生きているよう。一心不乱に走ったあとって、乱れません?文字通り、これまでの分を取り戻したいと、乱れてくる。なんのこっちゃ。コモンのイベント、最後の日。」
Back number
第1回「私がコモンで出会ったもの。」
第2回「司書になれなかった全ての大人たちよ、ここに集え。」
第3回「なんとも初々しい、コモンの新書たち。の香り?」
第4回「コモンで司書になる体験、後日談。私の長くて短い一日」
第5回「コモンの本棚、ついに擬人化しちゃうらしいよ。知ってた?」
第6回「みんな、100倍くらい考えて生きてんだって。コモンでただ本を読むだけ…って割り切るには、早すぎるんじゃない?」
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